なかなか話せないきょうだいの悩み…(イメージ)
なかなか話せないきょうだいの悩み…(イメージ)
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 子どもの障がいが、親にとって深刻なのは言うまでもない。そして多感な時期を共有するきょうだいもまた、人知れず悩みを抱えている。

 IT企業に勤める32歳の大輔さん(仮名)は今年5月、障碍者のきょうだいが主催する「きょうだいの集い」に初めて参加した。障碍の種類や程度にかかわらず、月1回程度きょうだいたちが集まり、悩みを話し情報を共有する場だ。

 大輔さんは3人きょうだい。二つ年上の姉と、三つ年下の弟がいる。弟には重度の発達遅滞がある。食事、トイレ、入浴など日常生活に介助が必要な弟の面倒を、幼少の頃からみてきた。

 他人に弟の障碍について話したことはなかった。

 弟に教科書をビリビリに破られたときは、学校に行っても事情を説明しなかったし、成人後、友人ときょうだいの話になり、弟は何してるの?と聞かれたときは、「大学に通っている」と嘘をついた。

 1年ほど付き合った恋人にも、話さなかった。自分にはない感性を持っている弟のことをうまく伝えられず、誤解を招くのが嫌だった。

「弟と真剣に向き合い、彼を守ることを常に考えてきたからこそ、自分自身の中で抱え込んできたのかもしれません」

 30代になり、結婚や仕事、家族の将来のことをあらためて考えたとき、弟の成長のためにも自分ひとりで抱えるのはよくない、と思ったのがきっかけで、きょうだいの集いに参加した。気兼ねなく話せる場は、ピアカウンセリングの役目を果たしてくれた。

 集いで弟のことを初めて話した大輔さんは、最近交際を始めた女性にも付き合う前に弟のことを打ち明けた。新たな一歩を踏み出せたように感じている。

 集いの主催者で、自身にもダウン症の兄がいるケアラーアクションネットワーク代表の持田恭子さん(49)は、「きょうだいによる、きょうだいのための、きょうだいへのサポートが必要」と話す。親のネットワークは昔と比べずいぶん広がったが、きょうだいが声をあげる機会はまだまだ少ない。

AERA 2015年8月17日号より抜粋