日々の仕事に追われるだけでいいのか。誰しも現状に疑問を抱く時がある。一段上がれば、仕事の幅もやりがいも広がるはずだ(モデル・向衣琴、撮影/写真部・松永卓也)
日々の仕事に追われるだけでいいのか。誰しも現状に疑問を抱く時がある。一段上がれば、仕事の幅もやりがいも広がるはずだ(モデル・向衣琴、撮影/写真部・松永卓也)
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 企業は今、ダイバーシティーの推進や女性の活躍を掲げ、国も女性の管理職登用を後押ししている。産休・育休や時短勤務など、整備の充実を図る企業も増えてきた。そんななかで、資生堂は働く女性に対しこんなアプローチを始めた。

 会社にぶら下がって働ける時代は終わった――。働く女性たちに、それを実感させたのが、6月下旬に日本経済新聞の1面で連載された記事にあった資生堂の例だ。資生堂といえば、女性が多く働き、女性に優しい会社の代表格。その資生堂が「甘えをなくせ」と、美容部員たちの働き方改革に取り組んだ内容だった。まさに「資生堂ショック」だ。

 改革は、主に育児中などで時短勤務で働く美容部員にも、遅番や土日勤務を促すもの。来店客が最も多い時間帯で経験を積ませるためだ。本人のキャリアアップを目指すためにも必要だと判断した。

 同社の女性活躍推進は、制度を整え、働きやすさを確保する段階を既に終え、女性を戦力化させるステージに入っている。

「それまで女性の活躍推進はCSRや福利厚生の文脈でしか語られてこなかった。経営戦略として女性のキャリアアップを打ち出しています」(資生堂人事部)

 資生堂に限らず、女性は保護の対象から、戦力とすべき人材へと役割が変わりつつある。日本生産性本部のダイバーシティ推進センターの長谷川真理室長はこう説明する。

「育児中の人が部署に数人なら、決められた範囲の楽な仕事を与えていればよかった。今はそれでは回らない。すべての女性を活躍させる方向にシフトしている。同じ職位であっても、年々、効率化や工夫が求められるようになり、管理職に限らず、現状維持ではいられません」

AERA 2015年8月3日号より抜粋