女性が様々な職場に進出したことで、男性が極端に「少数派」という職場は増えつつある。多くの女性のなかで生きることに慣れていない男性は、女性職場でどう振る舞っていけばいいのか。
女性向けファッションブランドの「CECIL McBEE(セシルマクビー)」で知られるジャパンイマジネーションの東京オフィス。ここに、華やかな装いの女性社員に囲まれ、仕事に打ち込む男性がいた。
入社7年目の山内浩之さん(31)は、セシルの商品管理部門を経て、3年前から、より大人向けのブランド「Fabulous Angela(フ ァビュラスアンジェラ)」の営業部に所属する。
男性が多数派だった前の職場とは一転、いまの部署は9人中8人が女性。紅一点の反対語が「緑一点」なのか「黒一点」なのかはさておき、山内さんは慣れない環境に戸惑うことも少なくなかったという。
ある日の会議。議題は「ハロウィーン」の販促戦略だった。ところが、洋服を手に取ってもらうための作戦会議は、いつしか各々のハロウィーン体験談の披露会に変わる。山内さんは焦る気持ちを抑え、腕時計をちらっと見た。
「もー、時間ないのに……」
もちろん、自由な発言が新しい発想に結びつくケースはあるし、「だから女性は」というステレオタイプはNGである。それを承知のうえで、山内さんは言う。
「議題に対してブレずに話を進めるのが普通だと思っていましたが、女性はいい意味で脱線しながら答えを探していく。その流れに乗っかりつつ、最終的にはうまく着地させるのが僕の役割だと思っています」
いまでは、部署のナンバー2としてブランドを支える。部下に仕事を頼むときには、ちょっとした気遣いを忘れない。
「『これ、やっといて』に『ね』をつけるだけで、指示ではなくお願いに変わるんです。○○してくれる『かな』も同じ。人生で一番、ひらがなの『ね』を使ってますよ」
※AERA 2015年8月3日号より抜粋