うつになると、憂うつな気分が続き、仕事や日常生活に支障が出る。最悪の場合、消えてしまいたい衝動にかられ、自殺を考える(撮影/写真部・大嶋千尋)
うつになると、憂うつな気分が続き、仕事や日常生活に支障が出る。最悪の場合、消えてしまいたい衝動にかられ、自殺を考える(撮影/写真部・大嶋千尋)
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 長時間労働や過大なプレッシャーで、30~40代のうつ病が増えている。景気が回復基調に入っても、職場環境は厳しさを増すばかり。企業も対策に乗り出している。

うつなど気分障害の患者のうち、35~44歳の働き盛りが占める割合は、1996年は全体の12.7%だったが、11年には21.3%と増加の一途をたどっている。

 長引く不況の中で、リストラ不安や雇用環境の悪化が、働く人たちのうつの原因の一つになってきた。だが、日本経済はここにきて、日経平均株価がITバブル期の高値を上回るなど「好景気」の様相を呈している。

 その好景気にも、うつのリスクは潜んでいる。チャンスを狙い競争が激化し、仕事量は増えるが、それを担う企業の人員は増えず、オーバーワークで仕事をこなさざるを得ないからだ。

 そんななか、企業でもうつの社員をサポートする取り組みが広がりつつある。大手カード会社のクレディセゾンは08年、うつなどの病気で休職した社員の復職をサポートするための「復職プログラム」制度を導入した。

 ポイントの一つが本人、職場、産業医、人事部が一体となって、復職に向けた準備を進めることだ。

 復職が近くなると、産業医が復職前の社員から症状や治療計画を聞き、復職後に配慮が必要な点を職場へ伝える。人事部は職場から復職後の勤務内容、就業時間について相談があった場合、本人と職場のバランスを考慮し、調整する。復職後も、原則3カ月まで最大2時間の短縮勤務が可能。9割近くは復職に成功しているという。

「職場が休職者を人事部に丸投げするのでなく、情報を共有して対応することで、スムーズな復職が可能になります」(戦略人事部・松井由紀緒さん)

 IT関連企業のアイエスエフネットには、うつ病などにより休職していた社員が復職するための「FDO(フューチャー・ドリーム・オーガニゼーション)室」と呼ばれる部署がある。

 まずは一日、3、4時間、本人があまりプレッシャーを感じない仕事などを任せ、徐々に時間を延ばしていく。以前のように働ける状態になったら元の現場などに復帰させるといい、長い人だと1年近くかけ、100%復帰するという。

AERA 2015年7月6日号より抜粋