1年ぶりに代表復帰し、親善試合でいきなりゴールを決めた、MF澤穂希(36)。W杯2連覇を目指す「なでしこジャパン」にとって、なくてはならない存在だ。彼女の「すごさ」を、周囲はこう語る。
勝負強さ。澤のすごさで、よく語られることの一つだ。前回W杯決勝の延長後半で決めた同点ゴールがその象徴と言える。 W杯の代表入りがかかった今季のなでしこリーグでも、その力を発揮していた。
3月の開幕戦で浦和レッズレディースに3-2で競り勝つ3点目を、試合終了間際にコーナーキックから得意のヘディングで決めた。代表発表前の最後の試合だった4月下旬のASエルフェン埼玉戦では、ペナルティーエリア内に駆け上がり、右後方から来たMF川澄奈穂美(29)のクロスに飛びついて右足ボレーでネットを揺らした。どちらも、佐々木監督が視察に来ていた試合だった。
澤とプレーしたことがある元代表選手や、現役の代表選手たちは口をそろえる。
「何がすごいのかは、口では言い表せないが、とにかくすごい」
なぜ、大事なところで結果が出せるのか。
「彼女はどの試合も区別なく、同じ気持ちでやっている。それが結果で表れる」
今季からINAC神戸レオネッサを指揮する松田岳夫監督(53)は、そう語る。松田監督は、澤を中学時代から知る。日テレ・ベレーザ時代に、リーグ4連覇を果たした05~08年は監督として指導した、恩師といえる存在だ。
練習でも、公式戦でも同じ気持ちでやる。当然のようで難しいことができるのが、澤だという。
「僕が全ての選手に要求しているのは、そういうことです」
いつも同じ気持ちでプレーできれば、大事な試合でも、硬くなったり、必要以上に力が入ったりしない。
「一番、自分の持っているものを出せる選手ではないか」
松田監督は、大一番でもいつものような力が出せるからこそ、結果につながると見ている。
※AERA 2015年6月15日号より抜粋