中央農業総合研究センター研究員牧夏海さん(25)埼玉県出身。狭山ヶ丘高校卒。東京農工大学大学院生物生産科学専攻修了。「研究が好き。将来は畜産と農業をつなげる研究がしたい」(撮影/編集部・内堀康一)
中央農業総合研究センター研究員
牧夏海さん(25)

埼玉県出身。狭山ヶ丘高校卒。東京農工大学大学院生物生産科学専攻修了。「研究が好き。将来は畜産と農業をつなげる研究がしたい」(撮影/編集部・内堀康一)

 リケジョの視点で、伝統的な農業の世界にイノベーションを起こそうとしている女性たちがいる。武器は理系の専門知識に加え、コミュニケーション力や熱意だ。

 茨城県つくば市にある中央農業総合研究センターの研究員、牧夏海(25)もそんなひとり。

「ちょうど穂が出て、野毛(のげ)がシュシュッと出たところ。風になびくと、銀色の波が立つんです。この時期の大麦って、本当にきれい」

 自ら管理する50メートルプールほどの大きさの畑で育った大麦にほおずりする。

 国内最大級の公的農業研究機関「農業・食品産業技術総合研究機構」の中心的な研究施設に入所して1年ちょっと。一つの畑で大麦と稲を同時に育てる技術研究に取り組む。

 大麦と稲を順番に育てるこれまでのやり方では、大麦の収穫と田植えが重なる6月が「超多忙」。でも大麦畑に種のままの稲を播(ま)き、一時的に同居させる方法なら、繁忙期を分散できる。

 この栽培法の可能性を熱く語る牧だが、実はこれを必要としている農家は一部だけ。「ニッチな研究なんです」と苦笑する。だが、地道な研究の積み重ねが、いつか私たちの食卓においしい作物を運ぶと信じて疑わない。休日も畑に駆けつけるほど研究熱心なのは、この仕事が天職だからだろう。

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