定時帰りには「キャラ設定が大事」と聞き、机の正面で自己主張(撮影/編集部・金城珠代)
定時帰りには「キャラ設定が大事」と聞き、机の正面で自己主張(撮影/編集部・金城珠代)
エクセルで予定を記録して振り返り(撮影/編集部・金城珠代)
エクセルで予定を記録して振り返り(撮影/編集部・金城珠代)

 やってみるとわかる。「定時退社」には強靱な意志と高度なテクニックが必要なのだ。記者が早帰りに挑戦してみた。

「定時退社の特集を、編集部員が定時退社で作ってみる」

 取材で出会う定時退社の人たちがイキイキしているのがうらやましくて、この企画を提案した。本当は編集部員全員で!と思っていたが、取材や編集作業は夜遅くに及ぶこともザラ。職場全体での定時退社は難しく、とりあえず1人で実践してみることに。でも、その前に…。

 いったい私の定時って何時? そもそも雑誌記者には定時という概念がない。取材スケジュールは基本的に相手の都合を優先するため、週末や夜7時以降に仕事が入ることも多々ある。週に2日間の校了日は必然的に夜間の作業だ。

 とりあえず社内ホームページにある就業規則を見てみると、「社員の勤務時間(休憩時間を除く)は1日7時間とし、1週間につき35 時間とする」となっていた。始業を朝10時とすれば、退社は18時。スケジュール帳に赤ペンでデッドラインを引いてみる。普段の退社時間はそれをはるかに超えていた。

 まずはワーク・ライフ・バランスに詳しい東レ経営研究所の渥美由喜(なおき)さんに相談。いくつかのアドバイスの中から実践してみたのは「一日の予定を立て、毎日結果を振り返ること」。エクセルにやるべきことを書き出し、優先順位とそれぞれにかける予定時間を定め、一日のスケジュールを作る。携帯電話でタイマーをセットして、原稿を書いたり、撮影の手配をしたり。タイムリミットを常に意識した。だが「敵」はすぐに現れた。

 電話の取り継ぎや、パソコンの画面下に現れる「新着メール」にいちいち対応していると、「あれ? 何してたっけ?」となる。集中力を戻すまでの時間が無駄になった。「ちょっと、あの件だけど」と急に始まる打ち合わせも、「悪いけどあれやっといて」という緊急案件も予定を狂わせた。パソコンやメールの不具合、原稿の書き直し…。予定外の案件は次々に起き、帰れない。最初の1週間はストレスだけがたまった。

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