少しずつ、身近な存在になりつつある「ロボット」。中には、「孤独支援」という聞きなれない分野で人をサポートするロボットもいる。
「対孤独用コミュニケーションデバイス」をうたうロボットがある。27歳の若き開発者である吉藤健太朗(オリィ研究所代表)が2010年に発表したのは、「OriHime」だ。
改良に次ぐ改良で、現在は上半身だけの卓上人型に落ちついた。カメラとスピーカー、マイクを内蔵している。
「孤独支援」というと、ソフトバンクの感情認識型ロボット「Pepper」(ペッパー)を思い起こすが、設計思想は異なる。こちらは勝手に喋ったりしない。使用者の目や耳、口、つまり分身となって、遠隔地の人とコミュニケーションをとる。ユーザーの操作で、首振りや手のジェスチャーを交えることもできる。なぜ作ったのか。吉藤はこう言う。
「自分は、小学5年から中学2年まで引きこもりで苦しんで、社会から孤立する感覚に苛まれたんです」
そこから脱して、高校、高専時代はロボット開発に没頭。やがて独居のお年寄りなどから、悩み相談も受けるようになる。手が動かない人や足が動かない人、寝たきりの人からの声もあった。早稲田大学に入り、「人が、自分の力で社会に関わることのできるロボットを作ろう」と決めた。現在は受注生産。今夏から、法人向けの販売を始める。
ロボットが癒やすのではなく、人を癒やすのは人。自らの発明品を、その懸け橋にしようというのだ。
(文中敬称略)
※AERA 2015年1月26日号より抜粋