アエラにて好評連載中の「ニッポンの課長」。
現場を駆けずりまわって、マネジメントもやる。部下と上司の間に立って、仕事をやりとげる。それが「課長」だ。
あの企業の課長はどんな現場で、何に取り組んでいるのか。彼らの現場を取材をした。
今回は資生堂の「ニッポンの課長」を紹介する。
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■資生堂 経営企画部 課長 岡田依子(45)
「SHISEIDO THE GINZA」は、創業の地、東京・銀座の目抜き通りに面する情報発信拠点。咲き乱れる花のように商品が並ぶ店内を見渡し、岡田依子は言う。
「たくさんのブランドがありますが、どれも“資生堂の商品”として知られてはいても、個々のブランドとしてグローバルに成功しているとは言いがたいところがある。今後は、それぞれブランドとしての個性を伸ばし、世界中のお客さまにご愛用いただきたい。その戦略を立てるのが、私の仕事です」
経営企画部の課長として、4月に社長に就任した魚谷雅彦の経営改革を実践する業務に当たる。部下は6人。他の業界から転職してきた社員も多く、よく「なぜ資生堂ってこうなの?」と問われる。そんなとき自問自答し、こう思うのだ。
「これまでの成功体験にこだわらず、かつてない手法を採り入れた新たな『資生堂ウェイ』をつくっていきたい」
立教大学文学部を卒業し、1992年、資生堂に就職。まもなく国際事業部門に異動し、ニューヨーク発の化粧品「5S」の立ち上げに携わった。29歳で「コンビニコスメ」の開発部署へ。めまぐるしく変化する世界へ、怒濤のような準備期間を経て参入した。
「自分で道を切り開くタイプではなく、与えられた仕事をがんばるタイプなんです」
32歳で出産し、約1年半の休暇を取った。しかし、ゆっくりした時間の中にいると、「仕事に戻らなければ」と思う自分がいた。復帰すると、当時苦戦していたメンズ商品の戦略立案を担当した。
息子は小6になった。
「仕事と育児の両立なんて格好いいことはできていません。できる範囲のことを頑張っているだけ」
そう控えめに話すが、たおやかな姿の中には強さを秘める。まるで“椿”の花のように。(文中敬称略)
※本稿登場課長の所属や年齢は掲載時のものです
(編集部・岡本俊浩)
※AERA 2014年10月13日号