多かった回答は「趣味や余暇の時間」「友達や家族との時間」「収入の維持」。
「役職」という答えは5.6%にとどまった。「役職」は「手放してもいいもの」でも最上位だった。今はポストがないと嘆いているが、年とともに執着は薄くなっていくようだ。
一方「収入」については「手放していい」が4割を超えたが、「譲れない」とする割合も5割近くあり、考え方に個人差が大きいことが見て取れる。
こぎれいな身なりで、化粧もきっちりしているが、ノーアクセサリー。
「ブランド志向は40歳を過ぎてなくなりました。最近、気を使っているのはネイルくらいかな」
と笑う女性は人材会社の課長(47)。キラキラしたものが最近似合わなくなってきたと感じている。
バブル世代だが、もはや「すごく欲しいもの」なんてなくなった。今、子どもは大学生と中学生。やがて彼らが独立したら、自分が生きていくだけのお金があれば十分かな、と思っている。
公益財団法人生命保険文化センターの「生活保障に関する調査」(2013年度)によると、夫婦2人で老後を送る上で必要と考える最低日常生活費は平均22万円。企業年金や退職金があり、昨年4月に施行された改正高年齢者雇用安定法で、定年後も希望すれば65歳まで再雇用されることになったので、それほど恐れることはない、というわけだ。
しかし、問題は65歳以降。
「終(つい)の棲家をどうするかなどライフプランによって、働くことの必然性は変わってくる」
中高年社員のキャリア開発に詳しい日本マンパワー取締役の片山.載さんはそう話す。やみくもに収入を心配する前に、自分は何歳ぐらいまで、どの程度のお金が必要で、年金以外でいくら稼ぐ必要があるのか見通しを持っておこう、というのが片山さんのアドバイスだ。
さて、ここで再び読者に聞こう。今の会社で定年まで働きたいですか?
アンケート回答者の8割は「思わない」と答えた。回答者の4分の3に転職経験があることから、今の会社にしがみつく感覚は一般に比べてかなり薄い。一方で「自分が望めば今の会社で定年まで働くことは可能」と答えた人は7割と、ずいぶんと自信を持っていることがうかがえる。
しかし、キャリア構築を支援するCareer Identity Inc.の野津卓也代表は「会社側は、定年までいてほしいなんて思っていない可能性大ですよ」とクギを刺す。
●依存型人材はいらない
グローバルな競争社会では、企業の寿命はどんどん短くなる。そうした中で「会社は旬の人に力を発揮してほしいのであって、与えられた仕事をこなすだけの依存型人材はいらない、というのが本音」。たとえ、転職組であろうと、社内にだけ目を向け、ポストの取り合いに汲々としているのでは、安泰ではないという。
「まず、仕事は会社から与えられるもの、という発想を変える必要があります。今の会社という狭い世界にとらわれず、残りの人生でどう社会に役に立ち、生きた証しを残したいのか、という『ライフキャリアビジョン』を持つことが大事。その実現に必要なスキルや経験・人脈を得るために、今の会社を利用する、というふうに会社と自分の関係を捉え直したほうがいい」(野津さん)