アエラ6月9日号に掲載されたコピーライターの糸井重里さんのインタビュー記事が、ツイッターやフェイスブックなどのSNSで大反響を呼んだ。それは、誰もがそんな「40歳の不安」に心当たりがあるからだろう。
特に、若くから活動してきた起業家やIT業界からの反応が目立った。実業家の堀江貴文さん(41)が「いいと思う!」とツイート、LINE上級執行役員の田端信太郎さん(39)も「糸井さんにとっての『ほぼ日』が自分にとってはなんだろう?と考える」などと感想を述べた。
希代のヒットメーカーも、40歳を前に、ふと、あることを思い抱くようになった。
「人の背中を見て覚えろ、ではなく、大人になってもちゃんと教えてくれる先生がほしかったんです」
映画プロデューサーの川村元気さん(35)はそう話す。30代で、「告白」や「悪人」「モテキ」などのメガヒット映画を世に送り出し、一躍、映画界の“時の人”に。その一方で、ある迷いも生まれた。
「自分なりに仕事の“正解”が見えてくるのって、30歳あたりからだと思います。20、30と年を重ねることで、人は確実にかしこくなる。その分、間違いをしなくなる。でも、間違ったことをしない仕事が、“良い仕事”とは限らない。がむしゃらに働いて自分が築き上げた経験がむしろ壁になって、惑いを生むのかもしれない」
川村さん曰く、仕事は「人生を面白くする装置」だ。だからこそ、これから20年、30年と仕事が楽しくできる方向性を探りたい。
川村さんは映画制作だけでなく、『世界から猫が消えたなら』『億男』『仕事。』などの著書を持つ。そして雑誌の対談連載で、“12人の巨匠”に会うことを決めた。山田洋次さんや倉本聰さん、沢木耕太郎さん、坂本龍一さんらに会って、30~40代の頃の仕事の話を聞いた。
「どんな仕事でも40歳が近くなると、恥ずかしさからか人に意見を求めづらくなる。自分ひとりで考えようとするから、迷いが生まれる。だから、僕は“先生”がほしい。糸井重里さんの言葉にはっとさせられたように、この先何があって、どうしたらいいか、僕は先輩から教わりたい」
※AERA 2014年11月3日号より抜粋