夫婦にとって、家事の分担は大きな問題。夫はどの程度負担すべき?夫の家事にインセンティブは必要?論争は尽きない。
ハンドルネーム「ムーチョ」で漫画ブログを運営する専業主夫の宮内崇敏さん(35)が8月、ツイッターで何気なくつぶやいた一言が「炎上」した。
<「妻がフルタイムで働いて、僕が主夫やってます」というと、いつも女性から「奥さん、偉いねえ」と言われるんですが、そう思うならそれと同じことをやってる旦那さんやお父さんをうんと褒めてあげてください>
これに対し「男のほうが楽」「女尊男卑だ」と論争が起き、宮内さんは「苦労自慢は不毛。お互いに褒めあえたら気持ち良いじゃないですか」とコメントした。宮内さん自身は、インセンティブは必要だと言う。
「仕事と違い、主夫は誰からも評価されないし達成する目標もない。せめて妻には評価してほしいから、子犬のように『褒めて』とねだったり、キャラ弁を作って『見せ家事』をアピールしたりします。相手を褒めたからといって自分が負けるわけでもないじゃないですか」
男性が家事や育児をしやすい環境を整えるためにインセンティブが必要だという意見もあった。
小学校教員の男性(32)の職場では、クラス担任はわが子が発熱しても休みづらく、しかも男性教員なら「奥さんがいるだろう」と一蹴される。
「男性が仕事を優先するのは簡単。家庭を優先する人に特別手当が支給されるなどのインセンティブがあれば、職場の雰囲気も変わっていくのではないか」
男性の育休取得などを妨げる行為を「パタハラ(パタニティー=父性・ハラスメント)」と呼んだ東レ経営研究所の渥美由喜(なおき)さんは、夫の家事分担割合と妻が感じるストレスの調査結果を「N字曲線」で表した。夫が家事をまったくせず完全に性別役割分業の場合、妻のストレスはない。だが夫が少し家事に関わると、やり方や分担割合をめぐって妻のストレス度は上がる。夫が主体的に家事をすれば妻の負担が減りストレス度も下がる。が、夫がすべて家事を担うと妻の自己評価が低くなりストレス度も上がるというのだ。
「N字曲線をここ数年の日本の状況にあてはめると、入り口でインセンティブを与えて夫を育てる右肩上がりの段階は終わり、仕事・家事・育児を夫婦でどうシェアするか本質的な話をすべき時期にある。摩擦を恐れず、男女が同じ土俵に立って対等な議論をすることが重要です」
※AERA 2014年9月29日号より抜粋