仕事に家庭にボランティアに。めまぐるしい日々を送る人は多い。充実した毎日のためには、健康第一!忙しい中でも体調管理するには、考え方や時間の使い方のひと工夫が大事だ。(ライター・高山敦子/編集部・高橋有紀)
飲み会が終わったあと、みんなを帰してひとりでビッグエコーに向かう。会員証を出さなくても店員は「村田さんですね」。顔パスだ。
メガハイボールを注文し、テーブルをズルズルッと移動させる。カメラの位置をチェックして、踊っても恥ずかしくない位置を確認。
「ゲラゲラポー ゲラゲラポー」
妖怪ウォッチからももクロまで、歌って踊る時間が、トレーダー村田美夏さん(44)のストレス発散タイムだ。
年間2億円稼ぎ、テレビにも出演。そのぶっ飛んだキャラクターと、東京大学経済学部を首席で卒業したという経歴で注目を集める。トレードの仕方があまりに激しいことから、ついたあだ名は「ウルフ村田」。
20代の銀行員時代は残業続きだった。不良債権処理などストレスフルな仕事も多く、金属アレルギーを発症したり、微熱が1カ月下がらないまま点滴を打って働き続けたりした。
「得意なものと苦手なものに差がありすぎるから、得意なものに特化することが、心身の健康に最も大事だと気づきました」
独立してからは、稼げるときに集中して働き、あとは流す、という働き方を心がける。
「トレードは、集中力や勝つ自信がない中途半端な状態で入ると、一気に数千万円損してしまう。それなら寝てる方がまし。調子が悪い時には抜く、というようにメリハリをつけないと」
判断力を保つため、スキマ時間にも睡眠を取る。食べると眠くなるので、仕事の合間に食事はあまり取らない。
仕事だけでなく休みもメリハリを大事にしている。1カ月休んで海外に行ったこともある。旅先では、高級ホテルにも泊まるが、タイ・バンコクのカオサン通りの安宿にも泊まる。
「安いところと高いところが好きなんです。中間にはあまり興味がない。人目を気にせず好きなことをすることで、一番リラックスできます」
健康を保つための今後の課題は、ずばり酒量だ。多額のお金が動く緊張感ある仕事のため、ついついお酒でストレス発散しがち。ストレスフリーな酒量の減らし方を目下、思案中だ。
●自転車通勤で空を見る
多忙な人は「健康づくり」のために特化した時間をつくることが難しい。独自のストレス発散法や考え方、時間の使い方を通して、日常生活の中で体調を整えている。ドワンゴのエンジニア、岩城進之介さん(41)が活用するのは「通勤時間」だ。
自転車通勤歴はかれこれ10年になる。自宅から会社まで片道約6キロ、社屋が現在地に移転する昨年7月までは約10キロの道のり。空を見上げながら寝そべって自転車をこぐ。背もたれ付きのシートに仰向けにもたれかかった状態でペダルをこぐ「リカンベント」が愛車だ。
「自転車に乗っているときはスマホもパソコンも見ないでしょ。頭を空っぽにしてひたすらこいでいると、一切の情報から解放されて、気持ちも体も完全にリセットできる」
仕事では、ニコニコ動画のライブハウス「ニコファーレ」のイベントを企画。プロ棋士とコンピューターが戦う「将棋電王戦」のシステム開発にも携わる。一日じゅう社内にこもってパソコンと向き合うこともある。
「自転車で通勤すると朝はすっきりした頭で出社し、夜は走りながら仕事の頭を切り替えることができる。街灯と街灯の間を何回転でこげるかが、体調のバロメーターにもなっています」
仕事も趣味も体調管理も「関心のあることはとことん楽しむ」のが信条。愛車に出合ってからは、片道10キロ程度であれば自転車で出かける。
1日の最長走行記録は、東京─埼玉・長瀞間往復の約250キロ。休日には、息子(7)と娘(3)用に自転車とカートを後ろにつなげ、3人で近くの公園内をサイクリングすることもある。
「子どもと一緒に自転車でお散歩できるシステムを開発してみました(笑)」
自転車が自身の健康づくりのみならず、子どもと触れ合うツールにもなっている。