


昭和の風情漂う一軒家は、シェアオフィスの新形態。仕事だけじゃなく、時にはライブや居酒屋イベントを開催したりも。利用者はさぞかし親密かと思いきや、そうでもない様子。新しいシェアオフィスの形を取材した。
京王線代田橋駅にほど近い閑静な住宅街にたたずむ、築50年を超える木造一戸建て。プロダクトデザイナーの海山俊亮さんの自宅兼事務所で、3人のクリエーターとシェアするオフィス「杉並海の家」(東京都杉並区)である。
内装は天井を塗り直し、畳をはいでフローリングを敷くいたりとメンバーが大胆に改装した。ワークスペースは急な階段を上った2階で、各自の机が置かれている。1階、2階を合わせた広さはおよそ95平米。改装費用は40万~50万円で、メンバーが協力して負担した。
これほどこだわりのあるシェアオフィスなら、さぞかしメンバー同士も親密だろうと思えるが、必要以上に干渉しない。むしろ運営方針はオープンだ。
「誰かがしばらく来なくても、最近、来ないなあと思うだけ。組織ではないので、使い方に細かい決まりもありません。遠くからメンバーの友達が来たら、寝泊まりしても構いません。もともと金属加工所だった建物で、工員が寝泊まりしていた作り付けの二段ベッドが今も残っているので」(海山さん)
不定期に「海開き」と題したオープンスタジオイベントを開催している。フリーマーケットやライブ、1日だけの居酒屋など、その時々で内容が変わり、来場者は毎回60~70人にのぼる。この夏は、庭先で流しそうめんを楽しむ会を計画している。
最近はフリースペースの貸し出しも始めた。第一弾は手芸作家の個展を開催し、以降もいくつかの企画が持ち込まれている。メンバー以外の人も含めて、空間のシェアを楽しんでいるのである。
※AERA 2014年9月8日号より抜粋