土砂災害で押し流され、倒壊した家屋。現場では、消防や警察による救助活動が続いていた/8月21日、広島市安佐南区八木(撮影/写真部・松永卓也)
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土砂災害で押し流され、倒壊した家屋。現場では、消防や警察による救助活動が続いていた/8月21日、広島市安佐南区八木(撮影/写真部・松永卓也)
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斜面で崩壊が発生した場所(◯印)から、土砂が一気に流れ下ったようだ。新潟大学の福岡浩教授による判読(写真:パスコ、国際航業提供)
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斜面で崩壊が発生した場所(◯印)から、土砂が一気に流れ下ったようだ。新潟大学の福岡浩教授による判読(写真:パスコ、国際航業提供)

 8月20日未明、広島市北部で土砂災害が発生した。15年前の教訓は生かされなかった。

〈今回の災害は、水を含むと著しく強度が低下するまさ土斜面が広く分布する危険な地域に、(中略)短時間に大雨が集中したことが大きな原因〉

 これは土木学会の災害緊急調査団がまとめた速報の一部。ただし、15年前のものだ。1999年6月29日、広島市北部などで土砂災害が発生、32人の死者・行方不明者が出た。

 この速報は、前兆なく突発的に発生する可能性がある土砂災害に対して、避難勧告などの対応が素早くできる体制になっていないと指摘。危険度に応じた土地利用、家屋建設、住まい方、避難システムのあり方について検討を求め、こう警告した。

〈(主に夕刻に発生したが)もしこれが夜中に生じていたら人的被害はさらに拡大していただろうと推測される〉

 警告は今回、現実になった。

 土石流の引き金になったのは、短時間に集中した雨だ。首都大学東京の松山洋准教授によると、前線があり、その南から高温多湿の空気が入りこむことで、西日本上空の大気は不安定となり、積乱雲が発生しやすくなった。

 防災科学技術研究所の解析では、広島市安佐南区から安佐北区にかけて長さ23キロ、幅5キロの狭い範囲に、8月19日から20 日にかけての12時間で、合計200ミリ以上の雨が降った。積乱雲が風で流され、同じ場所で次の積乱雲が発生し続けて、ビルの後に別のビルが並ぶように連なる「バックビルディング現象」が起きたとみられる。土砂災害が発生した地区の雨量は、推定250ミリ以上。安佐北区の降水量は3時間で217.5ミリと、平年の8月1カ月分を上回る雨量だ。
 
 15年前に人的被害が集中した地域も、3時間の雨量が最大120ミリ近かった。そのときは1週間、雨が降り続き、地盤がゆるんでいた。そこへ雨が短時間に集中して降り、災害が発生したとみられている。

AERA 2014年9月1日号より抜粋