ヤフー社長、宮坂学の言葉「爆速」はすっかり企業イメージになった観がある。しかし宮坂が社長になる前のヤフーは、そんな言葉とはほど遠い会社だった。

 孫正義率いるソフトバンクグループの中核会社であるヤフーは、子会社などを含めた従業員数が6千人を超える。経常利益は1997年の株式公開から2014年3月期まで、17期連続して最高を更新。リーマン・ショックで国内の名だたる大企業が危機的状況に追い込まれても、増益を続けた。ただ、それが“ゆるみ”を生む。

 IT企業の本質は絶え間ない革新にある。でなければ、この業界で瞬く間に古臭くなる。ところが、宮坂が社長に就く以前のヤフーには、危機感を抱く社員がいる一方で、

「現状維持でOKという空気もあった」(広報担当)
 
12年、孫はヤフーの社長を井上雅博から、執行役員で当時44歳だった宮坂に代えることを決断する。執行役員も新たに若手を起用し、経営陣の平均年齢は10歳ほど若返って41歳になった。そのとき宮坂が掲げた言葉が、「爆速」だ。宮坂は「脱皮しない蛇は死ぬ」と考え、大胆な社内改革に乗り出した。

 たとえば、意思決定のスピードアップ。事業を始めるとき、8回も必要だった社内承認を、2回で済むようにした。権限の移譲も進めた。その結果、新たな試みが続々と生まれた。

 動画連動型広告、スマート端末重視の戦略「スマデバファースト」…。なかでも目覚ましかったのは、eコマース革命だ。ネット通販の出店料を無料化。過去10年余りで計2万店だった加盟店を、半年で8万店にまで増やした。

(文中敬称略)

AERA  2014年7月21日号より抜粋