
ファミリー企業で重要なのは、次の世代がいかにして事業を継ぐのかということ。周りにちやほやされがちな2世だが、意外と悩みは深いらしい。実際に、後継者たちは何をきっかけに継ぐ決意をするのか。
卸売業3代目を目指して勉強中の女性(23)は、高校生のときに事業承継を決意した。父親から具体的に何か言われたことはなかったが、長女の自分には特に厳しく、「会社以外の世界を知らないくせに」と反発した時期もあった。周囲からは「親の敷いたレール」「コネ」と言われるのが嫌で、友人にも親が経営者であることを隠した。
「でも、高校生のとき、会社の花火大会や新社屋完成式で実際にたくさんの社員とその家族を目の前にして、重責を感じました。それからは代替わりで売り上げを落とさなかった親はすごいなと思うようになった」
不動産業3代目にあたる男性(25)も、周囲の視線に嫌気がさした時期があった。中学時代のあだ名は親の車種から「センチュリー」。地元商店街では「○○さんの息子さん」と呼ばれた。友だちに「お前は将来安泰でいいよな」と言われるのが嫌で、大学は、あえて法学部に入った。
「弁護士とか、一人でできる仕事がしたかったんです。でも社会のことが見えてくると、父はやっぱりすごいなと尊敬するようになった」
建設業4代目を目指す男性(25)は高校時代、社内の新年会などで「顔見せ」が最も緊張する瞬間だったと話す。
「社員たちは『こいつが息子か』という厳しい目を向けてきます。見られている意識は常にあって、当然話す内容や言葉遣いは気をつけていた。親子がちゃんと話して、いい関係をつくっていれば自然と後継者としての意識は芽生えると思います」
※AERA 2014年6月2日号より抜粋