今やTOEICはビジネスの基礎スキル。就職、転職時、さらに人事評価や昇格要件としての英語力の指標となることも多い。ハイスコアをとるための必死の攻防が各所で行われている。
これまで20回以上990点満点を取得している、TOEICセミナー講師の濱崎潤之輔さんの元には、「スコアが心底ほしい」と願う人たちが日参している。600点取らないと減給になるとか、派遣切りにあうなど、背水の陣でTOEICに挑む人たちから相談が寄せられることもしばしばだ。
1点でも多く(実際にはTOEICは5点刻み)スコアを上げてほしいと、英語力それ自体を伸ばす指導はもちろんだが、試験のテクニックを伝授することも忘れない。たとえば、リスニングの長文パートでは正解の選択肢をマークするまで押さえておく指使いまでアドバイスする。
人生をかけて猛勉強に励むTOEICer(トーイッカー)たちの絆は熱く、交流の輪も広がっている。週末に勉強会を開いたり、泊まり込みで合宿を行ったりする。2日間で18時間勉強するというTOEIC合宿は、いつもキャンセル待ちが出るほど人気だ。
一冊の教材を最初から最後まで終わらせることを「1周する」と呼ぶなど、独自の用語もある。ちなみに良質な教材は7周から10周「回す」のがよいとされている。
満点まであと5点足りないTOEICerのひとりは、「TOEICほど私を熱くさせてくれるものはない。受験中の緊張感もたまりません」と話す。
問題をひとつでも多く解きたいと、TOEIC先進国である韓国から模試本を取り寄せることもある。解説はすべてハングルなので、正答を確認するだけしかできないが、それでも満足だ。公開テストより問題文が長く、巧妙なひっかけ問題も多い。難易度が高いので「高地トレーニング」になるのだという。
※AERA 2014年4月28日号より抜粋