1993年7月の会社訪問解禁日に撮影されたスーツ姿の学生。紺やグレー、白といった色やブラウスの襟の形に個性がみられる (c)朝日新聞社 @@写禁
この記事の写真をすべて見る

 リクルートスーツは黒がいい。そんな「神話」が就職活動を行う学生に浸透して久しい。もっと自由に自分を表現してほしいと、2011年末にソニーグループが採用活動における「服装自由化」を宣言したが、今なお学生の間には「神話」が根付く。

 量販店に話を聞いても、確かに黒が売れているという。量販大手、青山商事の広報担当者は、「色については女性も男性もほとんどが黒です。ここ数年、その傾向は変わっていません」

 AOKIの担当者も、「過去5年以上前から、需要の高い黒無地の既製服をリクルートスーツとして展開しています」

 いつごろから黒スーツ信仰が始まったのか。就職サイト大手「マイナビ」の三上隆次編集長は「00年ごろからではないか」と話す。要因の一つに挙げるのが、ネットエントリー開始に伴う合同説明会などの就職イベントの大規模化だ。

「応募者が増えたことで大手がイベントを利用するようになり、参加者が2千、3千人規模から2万、3万人規模に拡大しました。そのころから会場で黒いスーツを見かけるようになりましたね。参加者が増えたことで学生が他者との比較をするようになり、結果的に、目立つのを恐れて、みんなと同じ黒を選ぶようになったのでは」

 景況感との関係も話す。バブル期は売り手市場だったため学生側に「どこかに入れるだろう」という余裕があり、スーツも好きな色や柄を着ていたが、景気の落ち込みと採用減に比例して「学生が萎縮して黒を選ぶようになった」とみる。

 この5、6年で傾向はさらに強まったと三上編集長は話す。

「色や柄にとどまらず、髪形とかネクタイとか、パンツの裾がシングルかダブルかということまで全部気にしている感じがしますね。大学に講演に行きますが、学生の質問内容から『周りの学生と違うように見られたくない』という意識が年々強まっている気がします」

AERA  2014年4月7日号より抜粋

[AERA最新号はこちら]