Before「机や台が多すぎる」との指導で、部屋の真ん中にT字に延びていた机をひとつ撤去して、窓際に並べるレイアウトに変更。目の前に台があると、つい物を置いてしまうのが人情だが、なければ置かない(撮影/写真部・岡田晃奈)
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「机や台が多すぎる」との指導で、部屋の真ん中にT字に延びていた机をひとつ撤去して、窓際に並べるレイアウトに変更。目の前に台があると、つい物を置いてしまうのが人情だが、なければ置かない(撮影/写真部・岡田晃奈)
Afterゴミをすべて出し終えたら、使えるスペースもざっと4倍は増えて、見違えるように。ただし、仕事のできる人になったかの実感はまだ(撮影/写真部・岡田晃奈)
After
ゴミをすべて出し終えたら、使えるスペースもざっと4倍は増えて、見違えるように。ただし、仕事のできる人になったかの実感はまだ(撮影/写真部・岡田晃奈)

 机の上、片付いてますか? 仕事中、常に何かを探していませんか? そんなカオスに悩む皆さんのために、世界のトヨタ式片付けを伝授。本誌専属“体当たり”ライターが、自宅のカイゼンに挑んだ。

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 これまで編集部からの数々の無理難題に体を張って応じてきたが、今回はその中でも最大級のミッションだ。自分の仕事部屋の片付け。それもただの片付けじゃない。トヨタ式で片付けろ、というもの。トヨタといえば、国際語にもなった「カイゼン」で知られる。工場などの「業務改善」のことで、なかでも整理整頓が厳しいことは有名だ。

 そんなトヨタ式が私の仕事部屋にやってきた。今回指導してくれたのは、トヨタ勤続40年以上のOBらからなる2002年設立のコンサルティング会社「OJTソリューションズ」(名古屋市)。普段は全国の法人相手にトレーナーを派遣してトヨタ式を広めているが、今回は特別に、私の仕事場をカイゼン。作業着に身を包み、名古屋から来てくれたのは元トヨタマンのトレーナー、原田敏男さんだ。

 ターゲットになった仕事場は、自営で設計関係の仕事をしている夫と共有で12畳。ライターと設計というオールドウエーブな仕事場が2所帯入っているだけに、紙の資料や本はやたら多い。しかも主はどちらも、出しっぱなしタイプ。いつか整理しようと思いつつ、見ないようにしていた段ボールやら書類の山やらが、気軽に立ち入れない山岳地帯を形成。いよいよ机の上の仕事スペースまでなくなり、最近の私は「家庭内フリーアドレス」と称し、2階の自宅で仕事をすることも多かった。原田さんが言う。

「やっぱりそうですか。写真を見て、この仕事場のどこで仕事ができるのか不思議でした。整理整頓はカイゼンの“いろはのい”。まず、仕分けしましょう」

 トヨタ式ではまず、部屋にある物をすべて出して、「いつも使うもの」「いつか使うもの」「使わないもの」の3種類に分類する。「いつも」は「アクセスするまで10秒以内」が基本で、デスクから手の届く範囲に置くようにする。

 一方「いつか」は、ファイルや棚に収納。ただしこちらもラベルを貼るなどして、ムダに探さずスピーディーにアクセスできるように収納するのが鉄則だ。

 まあ、「いつも」はすぐに決められるが、「いつか」と「使わない」ものの線引きはむずかしい。使うかもしれない日を「未曽有の天災が来たら」とか、「独居老人になったら」などに設定すると、いくらでも「いつか」の部に入れたくなってくる。先生、どうしたらいいでしょう。

「それは99%使わないものです。1%の可能性のために、スペースを占領させますか? もし迷ったら、数カ月廃棄の期限を延ばして、本当に必要なものかどうか判断してください」

AERA 2014年3月31日号より抜粋