1月末、画期的な論文の執筆者として、颯爽と登場した小保方晴子さん。リケジョブームを盛り上げたが、1カ月あまりでこんな騒動に…… (c)朝日新聞社 @@写禁
1月末、画期的な論文の執筆者として、颯爽と登場した小保方晴子さん。リケジョブームを盛り上げたが、1カ月あまりでこんな騒動に…… (c)朝日新聞社 @@写禁
この記事の写真をすべて見る

 世界中が注目した新型万能細胞の論文に疑惑が突きつけられている。理研の小保方晴子ユニットリーダーらが英科学誌ネイチャーに1月末に発表した新型万能細胞「STAP細胞」の論文に、画像の加工や他の論文に酷似した記載がみられるのだ。

 著名な科学雑誌がミスをなぜ見抜けなかったのか。論文を発表するには、複数の査読者のチェックを経る。ただ、論理的な構成になっているか、十分な実験かなどが調べられるだけで、細かいデータまで調べられるわけではない。科学の世界は「性善説」で動いている。

 そのかわり、いったん不正が発覚して信用を失えば、研究者人生が断たれることもある。 それでも研究不正は後を絶たない。繰り返し指摘されるのは、論文の成果により、ポストや研究費の獲得が左右されるために、著名な雑誌への論文発表をめざして過度の競争が起こっていることだ。査読者から要求される追加実験のレベルは厳しく、プレッシャーを受ける中、デジタル画像の加工などの誘惑にかられることもあるといわれる。

 今回の「ミス」の背景に何があったのかはさらなる調査の結果を待たなければならない。 ただ、理研の野依良治理事長が会見で指摘したように、小保方さんが「未熟な研究者」であったことは間違いない。
 
 2011年の100ページあまりの博士論文のうち、20ページに及ぶ記述が、米国立保健研究所(NIH)がホームページに掲載した文章と酷似しているほか、参考文献リストもほかの論文と酷似していて、大量のコピー・アンド・ペースト(コピペ)をしていた可能性も指摘されている。

 博士論文は、一人前の研究者としてスタート地点に立つための免許証のようなもの。その時点で、研究者として最低限守らなければならない「作法」が身についていなかったのではと疑いたくなる。

AERA 2014年3月24日号より抜粋