ゲリラ・バンド/ハル・ギャルパー
ゲリラ・バンド/ハル・ギャルパー
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若き日のブレッカー兄弟が熱演する、過激なジャズロック。
The Guerilla Band/Hal Galper (P-VINE PCD 23922)

 先日はマイケル・ブレッカーの最後のアルバムを紹介したが、今回はマイケルとランディのブレッカー兄弟の、ごく初期の演奏を採り上げたい。70年代後半になって頭角を現し、マッコイ・タイナーをシャープにしたような演奏で知られる豪腕ピアニスト、ハル・ギャルパーが70年に録音した、その名も「ゲリラ・バンド」という実にアングラなアルバムだ。

 ギャルパーはブレッカー兄弟と仲が良く、『リーチ・アウト』(76年)や『チルドレン・オブ・ザ・ナイト』(78年)などのリーダー作でも彼らを起用しているが、みんながほぼ無名の時期からの盟友だったわけだ。ここではギャルパーは音をゆがませたエレクトリック・ピアノを弾き、ランディはトランペットにワウワウ・ペダルを装着している。つまりこのアルバムの演奏は、マイルスのバンドが同じ頃にライブでやっていたエレクトリック・ジャズのサウンドを、きわめて早い時期に採り入れたものなのだ。二台のドラムスが叩き出す混沌としたエイト・ビートの上で、ブレッカー兄弟とギャルパーが過激なソロをがんがん繰り出す「ジャズ・ロック」。そのアナーキーな突出ぶりが実に気持ちいい。

 マイケルのテナーはまだおとなしめだが、後年あまり吹かなくなったソプラノ・サックスの鋭い切れ味が印象に残る。ランディは音色もフレーズも安定していて、既にこの時期に、今に至る個性を確立していたことが分かる。大きい音で聴き倒せば、梅雨時のじめじめした気分も爽快になるかも。

【収録曲一覧】
1. Call
2. Figure Eight
3. Black Night
4. Welcome to My Dreams
5. Rise and Fall
6. Point of View

ハル・ギャルパー Hal Galper(key) (allmusic.comへリンクします)
ランディ・ブレッカー Randy Brecker(tp)
マイケル・ブレッカー Michael Brecker(ss,ts)