金正恩(キムジョンウン)の後見人で、北朝鮮のロイヤルファミリーの一員である張成澤(チャンソンテク)が、国家転覆容疑で逮捕、4日後に死刑執行された。背景には、「女帝」ともいえる女性の存在があった。
張氏は12月8日の朝鮮労働党・政治局拡大会議で「悪事」をさんざん暴露・糾弾された揚げ句、「反党・反革命の宗派(派閥形成)行為を犯した革命の敵」と弾劾された。「何人もの女性と関係を持ち、麻薬にふけり、海外でバクチに狂った」と「破廉恥漢」のレッテルまで貼られた。さらに、うなだれる張氏を保安員が促すように逮捕、連行する瞬間の写真2枚が翌9日午後に朝鮮中央テレビを通じて電撃公開。当局はその日の朝、国民に「午後の重大放送は必ず見ろ」と命じていたという。
北の当局は13日朝、張氏について「12日の特別軍事法廷で、国家転覆を企てた罪で死刑判決を下し、即時執行した」と発表。手錠をかけられた張氏の写真も公開された。
張成澤氏、67歳。金日成(キムイルソン)総合大学卒業後、党活動に入り、金正日氏の側近として長く活躍。金正恩体制がスタートしてからは正恩氏の「後見役」として党行政部長、党政治局員、国防委員会副委員長など八つの要職を兼ね、絶大な権限をふるっていた。また「改革開放派」の筆頭と呼ばれ、中国と太いパイプを持つことでも知られていた。
張氏の粛清について、「対立してきた軍部による親衛クーデター」(早稲田大学の重村智計教授)との分析も多い。同時に何人もの朝鮮半島関係者らはこう指摘するのだ。