アベノミクスに乗って強気の安倍晋三首相だが、地方選では自民党が連敗している。目立ったものでは、11月17日投開票の福島市長選で、現職の瀬戸孝則氏(66)が、新顔の元環境省職員、小林香氏(54)に、2倍以上の得票差で負けている。
菅義偉官房長官は、福島市長選の結果を受けて「現職が敗れるのは、それなりの理由がある」と殊勝に語った。だが、それもそのはず。自民党神奈川県連会長の菅氏は10月、元官僚を擁立した川崎市長選で敗れているのだ。組織を挙げて臨んだが、新顔同士の戦いで競り負けた。
勝った無所属新顔を推したみんなの党の松沢成文参院議員は、次のように分析する。
「こちらは政党推薦なしで、向こうは自公民相乗り。対照的な構図で戦いやすかった。福島は原発問題があるでしょうが、政党の談合への市民の批判という意味では同じ。自民や現政権への批判もあるでしょう。小泉さんの脱原発発言が注目を集めたのも、現政権がいかに地域住民の心をつかめていないかということだと思います」
神奈川県内では6月、横須賀市長選でも自民推薦の新顔が現職に敗れた。横須賀は小泉進次郎衆院議員の地元。国民的な人気がある進次郎氏も、内閣を仕切る菅氏も、地元の選挙を落としているわけだ。自民党神奈川県連幹事長の竹内英明県議は言う。
「安倍さんの支持率が高いといっても、ダメな民主党の受け皿になっているだけで、残念ながら自民党が支持されているわけじゃないのかもしれない。横須賀市長選なんて、俺も進ちゃんも自分の選挙以上にやったけどダメだった」
安倍政権の内閣支持率は、景気の上向きと国会の圧倒的な与党勢力に支えられ、秘密保護法案で強攻策に出ても、高止まりしている。7月の参院選では与党が大勝したが、地方選に目を向けると、4月以降だけでも名古屋市長選、さいたま市長選、静岡県知事選と、相次いで自民党の推した候補が落選している。
思い起こされるのは、2010年2月の長崎県知事選だ。政権の座にあった民主党の推した新顔が、自公両党の支援する候補に大敗。自民党はその後、地方選で勝利を重ね、参院選に勝利し、政権奪還につなげた。逆に言えば、地方選の相次ぐ敗北は、安倍政権が崩壊するアリの一穴になりかねないのだ。
※AERA 2013年12月9日号より抜粋