就職戦線は依然厳しい…かと思いきや、理系学生にとってはそうでもないようだ。一部では「バブリーな」光景も繰り広げられている。
肌寒い季節になってくると、都内有名大学の工学系研究室にはしばしば、若手OBが連れ立って後輩に会いに来る。
「旨いもの食べたくないか?」「進路相談に乗ってあげるよ」
主に大手企業に入社した先輩たちはそれぞれの誘い文句で学生たちを連れ出し、会社説明をしたり、ただ雑談をしたりして帰っていく。学生たちはタダでビールを飲め、時にはステーキやひれ酒などちょっとしたごちそうにありつけることもある。
先輩たちが帰ってしばらくすると、工場見学や、中堅社員との懇親会の案内がある。そこで企業側が気に入った学生には、最終面接の案内が来たり、学校推薦を取得してくるように指示されたりする。つまり、彼らはリクルーターなのだ。
文系学生が聞けば「一体いつの時代の話?」とでも言いたくなるようなバブリーな光景が、一部の理系学科ではいまだに繰り広げられている。中でも一番人気は機械・電気系統の学科だ。就職情報サイト・マイナビの三上隆次編集長は言う。
「機械・電気系は理系就職のほぼすべての業種で求められています。採用ニーズが非常に高く、常に売り手市場の学科ですが、今年はさらにその傾向が強い」
例えば、食品や医薬品のメーカーには化学や薬学の知識を持っている学生が就職しそうに思えるが、実は企業は工場などで必要となる機械や電気の知識や技術も求めている。汎用性が高いのだ。東京理科大学学生支援課の品野智香子係長は言う。
「理系の場合、企業の求人は、ある大学のある学科から何人という枠がある。企業はターゲット大学と学科を絞って採用しているのです」
※AERA 2013年11月25日号より抜粋