
猛暑が過ぎ、秋の訪れを感じるこのごろ。満員電車やエレベーターでムワンと立ちこめる加齢臭に、思わず顔を背けた経験はないだろうか。汗ばむ季節は終わったのに、どうして?
「夏場、汗くささに紛れて気づかなかった加齢臭は、秋口になると急に強く感じられます。また、汗腺のはたらきが活発な夏はサラサラとした水のような汗ですが、暑かったり寒かったりする秋は、汗腺に老廃物がたまりやすくなり、加齢臭の原因である『ノネナール』が生じやすくなるのです」
耳裏専用の加齢臭対策商品「ノカレ」を今年4月に発売したブラシナ(本社・愛媛県)の石川裕也社長は、こう答える。
ロウソクのような、古本のような…あの加齢臭の原因は皮脂腺にある。老化やストレスなどによって、皮脂腺の中にある脂肪酸「パルミトオレイン酸」と、過酸化脂質が増加。双方が結びついて分解・酸化されると、ノネナールが生じる。
「ノネナールは、わきや背中など皮脂腺の密集した部分から多く分泌され、耳の裏もその一つ。耳の裏は、ほかの加齢臭スポットと違って衣類で覆われておらず、入浴時に洗い忘れやすいため特にケアが必要です」
ノカレの主成分は、柿渋由来の「カキタンニン」や、緑茶から抽出した「チャ葉エキス」など。これらの天然成分がノネナールを包み、臭気を抑制する。第三者試験機関によるテストでは、ノネナールの消臭率が90%以上だったという。
加齢臭対策の新アイテムは、ほかにもある。香川県内のクリーニングチェーン「白洋舎」は、8月、衣類の加齢臭を除去する「ノネカット加工」の提供を始めた。同社社長の鵜川俊英氏は「もともと高齢者施設への宅配クリーニングをしているなかで、衣類や寝具に染みついたにおいに困っている声を聞きました」と開発の経緯を振り返る。
2010年から香川大学と共同研究し、2年半がかりでノネナールを分解するアミノ酸成分を突き止めた。特殊なつけ置き剤に衣類を一定時間ひたすことで、ノネナールを95%以上除去できる。通常の洗剤の除去率は50~70%にとどまることから、その威力がわかる。鵜川氏は、「従来の加齢臭対策は、香りのついた柔軟剤などでにおいをマスキングしていましたが、ノネカット加工はノネナールそのものを除去します」と胸を張る。
ゆくゆくは高齢者施設や個人宅用に、つけ置き剤を販売することも検討している。
※AERA 2013年10月7日号