NTTドコモがiPhoneの販売を開始した。実はこのことで事業の根幹が揺るぎそうなのが、端末メーカーだ。
iPhoneを販売しないドコモの存在は、国内の端末メーカー各社にとって「頼みの綱」だった。ドコモは今年5月には、ソニーと韓国サムスン電子の2機種を販売面で優遇する「ツートップ戦略」を打ち出してもいた。
そのドコモがiPhoneを販売し始めるのだから、国内端末メーカーへの影響は甚大なものになる。アップルは厳しい販売ノルマをキャリア各社に課すと言われている。MM総研によると、2012年度のiPhoneの国内出荷台数は1066万台。仮に、ソフトバンクとKDDIがそのシェアを分け合っていたとすれば、1社あたりの販売台数は約500万台。ドコモへの販売ノルマは500万台規模でもおかしくない。業界関係者の間では、「700万~800万台ではないか」という説も飛び交っている。
ドコモの13年度のスマホ販売計画は1600万台。つまり、ドコモが販売するスマホの半分近くがiPhoneに置き換わる可能性がある。SMBC日興証券の白石幸毅シニアアナリストは言う。
「カシオと協業してきたNECは既にスマホからの撤退を表明している。パナソニックも個人向けスマホからは手を引く構えだ。今回、ドコモまでもがiPhoneを売り始めることで、この2社以外の国内端末メーカーについても撤退を含めた戦略変更の可能性が高まるだろう」
シャープはiPhone向け液晶パネルなどを供給しており、今回の動きによるメリットとデメリットがある程度は相殺できると見られている。ソニーも「最近の新商品は評判がいい。冬モデルも魅力的な商品を出してくるだろう」(野村総合研究所上席コンサルタントの北俊一氏)として、踏みとどまれる可能性が高い。一方で北氏は、
「一つの国に国内端末メーカー4社は多すぎる。市場規模を考えても、2社くらいが妥当」
そうなると気になるのは、富士通や京セラの行く末だ。MM総研の横田英明研究部長はこう話す。
「海外展開がうまくいっていない富士通やシャープは厳しい。ただスマホは、家電との連携が強まったり、生活基盤の中心に位置づけられたりする流れがあり、各社ともそう簡単には手放せない。5年後の技術革新が、全く予想できない分野でもある。国内端末メーカーはじり貧のなかで、どこまで耐えられるかという問題になってくる」
生き残りをかけた最後の戦いが始まる。
※AERA 2013年9月23日号