悲願の五輪開催決定で、すっかりご満悦の猪瀬直樹都知事。一方で、意気揚々と凱旋した猪瀬氏と裏腹に、都職員たちの本音は「本当に東京に来ちゃったよ…」との戸惑いのほうが大きい。五輪招致はオレのおかげ、とばかりに猪瀬氏が増長することを恐れているのだ。部長級職員の一人が言う。

「副知事時代からの猪瀬さんの暴君ぶりは、石原(慎太郎・前都知事)さん以上。気に入らないことがあると担当者を呼びつけて、逃げ道がないところまで追い込むんです。それも、ことの正誤以前に、自分の体面のためとしか思えない内容。みんなオドオドしていますよ」

 今回のIOC総会では各部署から“有志”の名のもと、アルゼンチンまで50人ほどが“自費”で応援ツアーに動員された。自費とは名ばかりで、幹部職員中心にカンパで1人当たり30万円近くが集められたという。当然、投票が行われる会場に入れるわけでもない。

「日常業務はどうでもいいんでしょうか。やってられませんわ。これで、ますますいい気になられたらかなわない」(同前)

 都議会の反応も冷ややかだ。

「五輪招致は自公民を中心に表向き歓迎ですが、猪瀬さん1人の功績には絶対にしたくないというコンセンサスがあります。右から左まで、オール反猪瀬で一致してます」(議会関係者)

 よく知られるように、猪瀬氏と都議会の関係はギクシャクしている。若手自民都議が言う。

「都知事選と同時に行われた昨年12月の衆院選で、猪瀬さんは自民候補と合同演説をした直後に、みんなの党の応援に行く。信じられない無節操です。五輪を持ってきたという“錦の御旗”をかざしても、これから3年間、自民党が支えていくと思ったら大間違いですよ」

 もとをただせば、副知事時代の猪瀬氏は、五輪招致にむしろ消極的だった。4年前の招致失敗の際もだんまりを決め込み、大逆風の中、再立候補を決めたのは石原前都知事だった。

「その時も猪瀬さんは『石原さんマターにはタッチしない』と逃げていましたね。それが“漁夫の利”的に都知事になったら一転して、自分が発案者といわんばかりの自己顕示ですから」(石原都政時代の都庁幹部)

 そんなこんなも、本人にとってはすべて「勝てば官軍」なのかもしれない。いまや2期、3期の長期政権も語られる。

AERA 2013年9月23日号