ア・ホール・ニュー・ボールゲーム/ブーツ・ランドルフ
ア・ホール・ニュー・ボールゲーム/ブーツ・ランドルフ
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音楽生活の最期に残したこの1枚、ランドルフに乾杯!
A Whole New Ballgame / Boots Randolph

 1963年のヒット曲《ヤケティ・サックス》やエルヴィス・プレスリー、ロイ・オービソン、ジョニー・キャッシュ、チェット・アトキンスらポップス~カントリー系スター・ミュージシャンの助演で知られるテナーサックス奏者がブーツ・ランドルフだ。

 この新作をリリースしてプロモーションをして行こうという矢先の7月3日、脳出血のためテネシー州で死去。80歳の誕生日を迎えてからちょうど1ヵ月後のことだった。ナッシュヴィルを拠点に音楽活動を続けた同地のボス的存在であり、ジャンルを超えて活躍した長老だ。

 本作のコンセプトはランドルフのお気に入りだが、これまでにレコーディングしたことのないスタンダード・ナンバーを集めたもの。録音時のランドルフが79歳だったことと選曲を重ねると、サウンドはある程度予想できる。ところが聴き進めて驚いた。超ベテランがマイペースで名曲をさらりと吹いてみました、などという一丁上がり式の雰囲気ではないのだ。

 チャーリー・パーカーの《ビリーズ・バウンス》をバップ・ナンバーならぬ、ホンカーの本領を発揮したトラックに仕立てたあたりは、まだまだ精力旺盛。この曲に限らず、アップ・テンポでのエネルギッシュなプレイは、枯れることを拒んでいるようにも思えて頼もしい。その一方で《クライ・ミー・ア・リヴァー》のテナーはまさに絶品バラードと言いたい出来だ。音楽生活の最期に本作を残したランドルフに乾杯!、と評することこそが、故人の喜びでもあるに違いない。

【収録曲一覧】
1. I’m Beginning To See The Light
2. Billie’s Bounce
3. I’ll Be Seeing You
4. Take Me Out To The Ballgame
5. Candy
6. Basically Blues
7. ‘Round Midnight
8. Dream Dancing
9. Stompin’ At The Savoy
10. Cry Me A River
11. L-O-V-E
12. You’ll Never Know
13. I’ll Walk Alone
14. Nature Boy

ブーツ・ランドルフ:Boots Randolph(ts) (allmusic.comへリンクします)
ロディ・スミス:Roddy Smith(g)
スティーヴ・ウィレッツ:Steve Willets(p)
ジェイソン・ウェッブ:Jason Webb(key)
マーク・ストーリングス:Mark Stallings(org)
ティム・スミス:Tim Smith(b)
レイ・ヴォン・ロッツ:Ray Von Rotz(ds,per)