命をつなぐ携帯防災用品(撮影/写真部・植田真紗美)
命をつなぐ携帯防災用品(撮影/写真部・植田真紗美)
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 首都直下地震で多数出ることが予想されるのが、独身者の「おひとりさま被災者」。「ひとりだからなんとかなる」が落とし穴。首都圏に多い未婚者は避難所に入れない可能性も大きい。予想される大地震に備え、何から始めるべきか。

 被災時、なんといっても安心できるのは、信頼できる個人宅に身を寄せることだ。実家が遠方の場合、お互いの家での同居も含めて助け合える「災害バディ」を作っておくことを勧める。自分の住居が住める状態でも、ひとりでは心細い。危機管理アドバイザーの国崎信江さんによると、仙台市に住む30代後半の独身女性は、震災時、余震のあまりの怖さに男性同僚を頼り、妻子も暮らす同僚宅に1カ月間同居させてもらったという。

 といっても、30代にもなるとなかなか人にものを頼みにくい。そこでお勧めなのが携帯やスマホなどの「災害用音声お届けサービス」「災害用伝言板」の活用だ。毎月2回と防災週間などに体験できるので、平時のうちにバディ候補数人に音声やメールで、「試しに送ってみた」「その時はよろしく」などと明るくバディ申請するのもひとつの方法だ。

 ホームパーティーもバディ作りには有効だ。仲が良くても、家にまで行く機会はなかなかない。だが早朝や深夜の時間帯に地震が来た時、生存可能時間内に安否を確認してくれるのは、遠くに住む家族ではなく、近所の知り合いだ。歩いて行ける範囲内に、自分のバディ候補を作り、自宅に招き、また自分もバディになりたいと思える相手がいたら相手の家に遊びに行き、道順を覚えておこう。

 誰と、どこで避難生活を送るかを想定できたら、その場所に備蓄を。具体的に何を準備しておくべきかを、国崎さんと、首都直下地震発生から1週間の東京を想定した漫画『彼女を守る51の方法』(古屋兎丸著)とスマホ用アプリ版をともに監修した防災・危機管理ジャーナリスト、渡辺実さんにお願いした。ここではポイントを紹介する。

 まずトイレ。災害が起きたら決して水を流さず、燃えるゴミ袋を便器にかけ、中に吸収剤を入れて使おう。トイレタンクの水は「ほぼ上水を利用しているため、煮沸すれば約10リットルの貴重な飲み水になる」(渡辺さん)ので、ふだんからタンクの掃除をこまめにしておくこと。

 冷凍庫は今後、「備蓄倉庫」としての認識を。「水やアイスバーは普段から冷凍庫に入れ凍らせておき、地震で停電したらすぐ冷蔵庫の一番上に移して保冷剤として活用を。溶けてから飲めばいい」(国崎さん)。庫内の温度はすぐに上がるため、(1)冷蔵庫の中のもの(2)乾物など常温食材(3)非常食の順で食べることを国崎さんは勧める。良い匂いと音がするポップコーンなどは「食欲がない災害時こそ役に立ちます」。備蓄しているカセットコンロで調理しよう。

AERA 2013年9月2日号