子どもが欲しい夫婦にとって、切実な問題である「不妊」。不妊というと結婚した男女の問題と思いがちだが、その対策は未婚のうちから講じておいた方が良さそうだ。最近では早いうちからできる不妊対策として「子宝ヨガ」が行われている。

 子宝ヨガでは、排卵に必要なホルモン分泌を促す、生理周期別のヨガを推奨している。都内の教室で主婦に交じり、体験レッスンに参加した。

「さあ皆さん。手の温もりと同じぐらい、子宮を温めてくださ~い」

薄暗いスタジオでインストラクターのSakko(サッコ)さんの優しい声が響く。主催する「スタジオヨガマ」では希望者が増え、今春から仕事帰りの参加者向けに夜のコースを新設したという。レッスンは約1時間半。ヨガマットと毛布、ボルスターと呼ばれる硬くて丸い抱き枕のような補助具を使い、体を伸ばしたり、股関節を緩めたりするポーズを取った。

 個々の生理周期が異なるため、レッスンでは代表的なヨガを教えるが、書店で見つけた「子宝ヨガ」の本では月経周期別に23ポーズを提唱する。

 例えば生理中の「月経期」は、腰をやさしくねじる「ワニのポーズ」で経血をすっきりと出し、次の「卵胞期」では背骨と仙骨を刺激する「魚のポーズ」で大量の血液をつくり、卵巣や子宮に栄養を届ける、といった具合。

 ホルモン分泌の大切さは医師らも強調する。東京都足立区にある「臼井医院・不妊治療センター」の臼井彰院長によると、卵子を1個排卵するまでに関係するホルモンは四つ。それらが、休眠していた卵胞を起こしたり、排卵を促したり、重要な役目を果たすのだが、やっかいなことに、これらのホルモンは意識して出せるものではないうえ、ストレスに弱い。

 そのため、Sakkoさんは、自宅でできるストレス緩和のポーズとして「眠る女神のポーズを勧める。背中に布団やクッションを当てて支えを作り、体をもたせかけた状態で足の裏を合わせ、両ひざを開き、力を抜く。手もだらりと。そして呼吸を数分繰り返す。

「できることは、ただただ、ご自分への優しい呼吸だけです。唯一コントロールできる自律神経と言われる呼吸を、大切に扱って下さい」(Sakkoさん)

 レッスン後に参加者と話した。元編集者で結婚後はパートタイマーになり、現在、不妊治療に専念しているという主婦(38)は、

「働きながら不妊治療と生活改善を行うのはすごく大変。独身時代からやったほうがいい」

 と力説した。つらい思いをした経験から独身の友人に注意を促すが、聞く耳を持たないという。未婚のうちこそ、なのだ。

AERA  2013年8月5日号