山口県萩市で138.5ミリ、島根県津和野町は91.5ミリ、東京都目黒区や世田谷区、新潟県長岡市で約100ミリ…。
7月下旬の豪雨で、死者・行方不明者が出たり、住宅の浸水があったりした地域の1時間当たりの雨量だ。 天気予報や洪水に関する警報などでよく使われるこの「時間雨量」。毎年のように深刻な被害が出ている「ゲリラ豪雨」の報道でもおなじみだ。どれぐらいになると、水害が現実味を帯びるのだろうか。
スムーズに対応できる雨の量は、地域によって異なる。もともとの自然環境に加え、堤防や下水道、貯水施設などの整備状況で変わるからだ。
では、地域の処理能力を知るにはどうしたらいいのか。手がかりとなるのが、水害について各自治体が作成している「ハザードマップ」や、同マップのもとになっている「浸水想定区域図」(主な河川の流域について国や都道府県が作成)だ。ともに、特定の気象状況において、どの場所にどれぐらいの深さの水がたまるのかを地図で示している。自治体や国のウェブサイトで見ることが可能だ。
例えば、目黒区について知りたければ、区のハザードマップが役立つ。死者10人、床上浸水約2万3千棟の被害が出た2000年の東海豪雨を想定。1時間に最大で114ミリが降り、総雨量が589ミリに上った場合の浸水予想を、地図で色分けしている(都内各自治体で共通)。このマップで浸水がない場所は、東海豪雨の範囲内であれば、おおむね安全と考えられる。
問題は、浸水が予想されている地域だ。ハザードマップは、どの程度の雨量で浸水するのかは表していない。そんなとき参考になるのが、付近の河川の整備計画だ。目黒区などを流れる目黒川だと、「流域の総合的な治水対策暫定計画」(1989年)や「流域豪雨対策計画」(09年)がある。それらを読むと、都は86年から都内全域の河川で、時間雨量50ミリまでで水害が起きないことを当面の護岸整備の目標にしていることがわかる。都に聞くと、目黒川の整備は昨年度末で98%完了しているという。
これらから、目黒区の半分近くを占める目黒川流域では、時間雨量50ミリまでの集中豪雨であれば、大規模な浸水の恐れは少ないと推測できる。実際、過去20年以上にわたり、目黒川の主な水害はほぼすべて50ミリ以上だ。ただ、06年には唯一50ミリ未満(45ミリ)で8棟が浸水しており、過信はできない。
※AERA 2013年8月12-19日号