就活が終わっても、「遊ぶぞ!」と羽を伸ばさないのが最近の大学生らしい。希望する配属先を求めて、社員訪問、研修でアピールしたりと「配活」に打ち込む学生も少なくない。

 首都圏の有名私立大学に通うAくん(21)はこの4月、希望通り総合商社から内定をもらって就職活動を終えることができたはずだった。なのに、なぜか今でもOB訪問を続けている。会っているのは、内定先の商社に勤める先輩社員。内定後の約2カ月で、6人に直接会い、話を聞いた。内定先の人事に頼むだけでなく、同期の内定者、アルバイト先の友達、サークルの先輩など、さまざまなツテをたどって紹介してもらった。狙いは、ズバリ、入社後の配属先選びだ。

 話を聞いた社員の部署は財務、エネルギー、金属、化学品など様々。それぞれの入社後のキャリアについて聞き、自分の将来の姿を思い描いた。財務部門に勤める40代の先輩はこう語った。

「商社は最初に入った部門に長くいることが多いので、一度配属されると他の仕事をすることは難しい。でも、財務であれば様々なビジネスに関わることができる。実際に僕も繊維や食糧などたくさんの分野を担当したよ」

 就職活動時は営業のほうが面白そうだと思っていたが、話を聞いて財務の仕事にも興味が出てきた。

「どの部署も面白そうですが、せっかく希望を出せるのならいい加減に決めたくないのです」

 人材コンサルタントの常見陽平さんによると、このような活動をする学生は、実は少数ながら昔もいたという。常見さんの先輩にも、1980年代に内定をもらって、希望の部署でアルバイトをしてそのまま配属を勝ち取った人がいた。

 それでも最近、この「配活」が注目されつつあるのは、「ミスマッチ」という言葉が独り歩きし、学生の「自己実現をしなくてはならない」という強迫観念が背景にあると分析する。

「企業は筆記試験や面接で能力の傾向を見抜いて採用していますから、内定の段階でだいたいの配属イメージをつけていることが多い。多くの企業は内定を出した後にまで学生に構っていられるほど余力はありません。もちろん適性があっても、ポストに空きがないこともあります。最終的には雇う側の論理で決まってしまうことが大半です」

AERA 2013年7月22日号