2012年に3社が参入し、一気に就航が増えた格安航空。だが、利用者からの苦情は年々増えている。国民生活センターの発表によると、格安航空への12年度の相談件数は579件にのぼり、前年度の4倍になった。
内容は、「ウェブサイトでの予約方法が分かりづらい」「運賃以外に必要な費用の表示がない」「返金に約款にはない条件をつけられた」などさまざま。
「遅延や欠航が多いのは事実。某格安航空会社の予約画面は説明文の意味が分かりにくいなど、使い勝手の悪さで業界でも有名でした。今は改善の方向にあるようですが。ウェブサイトでの決済に不慣れな人やツアーでしか海外に行ったことがないような人には、まだ格安航空は、お薦めできないですね」(航空アナリストの杉浦一機さん)
格安航空の料金は、国内では5千円前後から。これが、飛行機での旅のハードルを下げて利用者の裾野を広げた。一方で「飛行機=高級な旅」のイメージを持ってしまう利用者とのミスマッチも生じさせている。
ある30代女性は、客室乗務員に荷物を上の棚に収納してもらえなかったと憤る。
「自分では重くて持ち上げられなかったのに、客室乗務員は『ご自身でやってください』って。ありえないですよね? 見かねて隣の男性がやってくれました」
元日本航空の国際客室乗務員で桜美林大学准教授の塩谷さやかさんは、一定の理解を示しつつも、こう話す。
「大手航空会社も格安航空も手荷物の収納へのスタンスは一緒。客室乗務員は保安要員としての業務が優先なので、搭乗中に不審者がいないか、危険物がないかなどをチェックしなければいけません。高齢者やお子様の荷物をヘルプするのは当たり前ですが、このような大人の方の場合、お荷物はご自身で収納していただくのが基本姿勢です」
格安航空は低料金で運航するために、何かしらのコストを削っている。機内サービスをシンプルに、スタッフの搭乗人数を最小限にする、保有する機種を揃えて整備コストを抑える──。
「大手は苦情につながらないための対応、苦情になってしまった場合の対処の仕方などに、長年の経験の蓄積があります。格安航空は首都圏の発着枠の増加に伴い就航したばかりで、日本での業務経験が少ないのです。どの業界も同じですが、これから改善をしていく段階。もう少し様子を見てあげてもよいのでは? また、会社側は苦情を真摯に受け止め、業務改善に努めることが大切です」(塩谷さん)
利用者としては、とりあえず、ニーズに合わせて使い分けるのがよさそうだ。
「ビジネスや緊急の用事で使うなら大手、ゆったりとした日程の旅行なら格安航空などと、利用者も目的に合わせて選択をしなければいけません。何より運賃を考慮すれば、格安航空は空飛ぶバスか鉄道と考えて利用すべきで、大手に求めるようなサービスは期待しないことです」
※AERA 2013年7月29日号