企業の共通意見は「やる気は嬉しい」。だが、有り余るやる気で空回りしないよう注意だ。「配活」で興味のなかった部署の良さに気づき、配属先はどこでもいい、と考え始めるケースも(撮影/写真部・大嶋千尋)
企業の共通意見は「やる気は嬉しい」。だが、有り余るやる気で空回りしないよう注意だ。「配活」で興味のなかった部署の良さに気づき、配属先はどこでもいい、と考え始めるケースも(撮影/写真部・大嶋千尋)
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 近頃学生のあいだで「配属活動」、略して「配活」という言葉が生まれている。これは、内定を得たあとに希望の配属(職種、部署、勤務地など)を勝ち取るためにする活動のことを言う。内定先の社員に会って話を聞くという方法もあれば、内定者研修で人事に希望をアピールしたり、提出する課題に希望をさりげなく書き込んでみたりと、様々なやり方があるという。

 大手マスコミに内定した首都圏の国立大学に通う4年生のBくん(21)は、オフィシャルな懇親会などではない、先輩社員と少人数で行われた飲み会で配属に関する情報を得たと喜ぶ。

「内定者研修では、研修以外の時間のすごし方も見られていると聞きました。話題の中心になっている人は誰か、よく話を聞いている人は誰かなども人事が見ているらしい。そういえば研修の休み時間にも人事がずっと退出しなかったのはこういう理由だったのか、と思いました」

 他にも、課題だけでなく事務連絡などの一見地味な締め切りも絶対守ることが評価に関わると聞いた。新入社員の人事権が誰にあるかも情報収集済みだという。それだけではなく、同業他社の人事情報まで、大学4年生とは思えないくらい詳しい。

「どうしても行きたい部署があるんです。面接でもそのことをしっかり伝えた上で内定をもらいました。先輩などから得た情報は大事に、評価につながることはしっかり押さえていきたい」

 企業の側は「配活」をどうとらえているのか。複数の企業に話を聞くと、「内定者の段階からやる気があるのは嬉しい」と口を揃える。具体的に仕事内容をイメージできておらず、入社後のミスマッチで辞めてしまう人が多いからだ。

 とはいえ、人事としては微妙な心境もあるようだ。国内大手企業の人事担当者はこう漏らす。

「内定者研修のとき、皆下を向いて聞いていても、『配属』という言葉が出た瞬間にほぼ全員が顔をあげますね。入社後のイメージを明確にもつのはいいことです。ただ、中にはバラ色の社会人生活という妄想を膨らませすぎてしまう人もいます。思い通りじゃなかったときに折れてしまわないか心配です」

 この企業では、毎年内定者の1割くらいからいろんな部署の先輩を紹介してほしいと相談されるという。大手金融機関の広報担当者もこう話す。

「内定後にロビー活動みたいなことをされても、正直ちょっと困ってしまいますね。希望を知っていても、成長させたいとあえて他の部署を経験させることもあります。与えられた仕事でちゃんと成果を出せる人でないと、社会人は評価されません。総合職は将来管理職や幹部になってほしいと期待して採用しています。『自分が好きなことだけやる』という人の部下になりたい人がいるか考えてみてほしいと思います」

AERA  2013年7月22日号