ゲイというと、新宿2丁目などのナイトライフやテレビのオネエタレントが思い浮かぶだろう。しかし実際のゲイたちは自分の将来をひそかに心配している。

 鳩貝さん(47)と河智さん(41)は、NPO法人レインボーコミュニティcoLLaboで活動するレズビアンのカップルだ。鳩貝さんは臨床心理士として、河智さんは住宅会社で働く。

 2人は年配のロールモデルを求めて、年上のレズビアンに話を聞いて回ったことがある。だが、団塊世代の先輩たちは決定的なところで違っていた。

「彼女たちの世代はきょうだいが多く、それがサポートネットになっていました。でも、私たち世代は、パートナーと、あるいは自分ひとりで迎える老後の送り方を考えないといけない」

 中年を迎えた彼女たちの周辺では、同性愛者のライフプランという考え方に関心を寄せる人も少なくない。既存の家族制度があてはまらず、自分たちのような存在への認知も乏しく、まして保護法制もない国で、どうやって自分の人生を守るのか。

「万が一に備えて遺言など書面の作成も考え、弁護士による自治体の無料法律相談に出かけてレズビアンだと言ったら困惑されました。なぜ両親やきょうだいに遺産を渡さないのかと説教もされた。双方の両親にはカムアウトずみなんですけどね」

 と2人は苦笑した。

 いまの心配は、どちらかの健康が衰えたとき。医療の場では個人情報保護が壁となって、「家族ではない」同性パートナーが締め出される恐れもある。患者本人が主張できれば、医療者はその自己決定に従ってくれるだろうが、発作中や急性期、意識がないときはどうなるのか。実際、病院に付き添ったが説明を拒否されたり立ち合えなかったりした事例もある。

AERA 2013年7月1日号