無残な首相辞任から5年、安倍晋三氏の首相返り咲きが確実となった。周囲の官僚、政治記者らによると、安倍氏には以前にはなかったある変化が見られたという。
9月。自民党総裁選で勝った安倍氏に“変貌”ぶりは現れていた。彼をよく知る元官僚はこう驚く。
「安倍さんは本来気配り上手な優しい人。それが随分ドライになった印象だ。安倍前政権で官邸の主要スタッフだった親しい議員2人を、今回は党の役職に就けなかった。かつての安倍さんなら必ず何かの役に就けたと思う。2人を嫌う党長老の強い要請を汲んだのだろう」
前の安倍政権は閣僚の顔ぶれから「お友達内閣」と揶揄され、閣僚の不祥事や参院選惨敗、安倍氏の体調不良が重なり、1年で崩壊した。当時と比べ、安倍氏がシビアに映るというのだ。「変化」を政治部記者はこう解説する。
「6年前の総裁選で勝ち馬に乗りたい議員はこぞって神輿を担ぎ、安倍さんは圧倒的多数で選ばれた。ところが政権が崩壊するや、少なからぬ議員が手のヒラを返すように彼に背を向けた。52歳で戦後最年少、初の戦後生まれの首相となった彼に嫉妬の目を向ける議員も多かった。人は打算で動くという現実を、彼は目の当たりにしたのです」
永田町は嫉妬の海である。それまでプリンスとしての扱いを受けてきただけに、反動の「しっぺ返し」も相当だった。本来、「心の壁はそれほど高くない。人見知りもしないし、見慣れない記者がいてもさほど気にしない。オフレコだとざっくばらんによくしゃべる」(前出の記者)人なだけに、“裏切り”はこたえたようだ。
※AERA 2012年12月24日号