強姦や強盗など、在日米兵による犯罪が深刻な問題となっている。犯罪のたび非難を浴びるのは必至なのに、夜間外出禁止令が出ているときにまで真夜中の犯行に及ぶ米兵たち。そして、まるでそれを予測しているかのように、素早く火消しに動く在日米軍。約3万7千人もいる彼らの全体像を理解することはむろん不可能だが、接触可能な米兵たちを通して、在日米軍と呼ばれる人たちの行動や思考の一端を知ることはできないか。そんな思いで、米軍基地が集中し、米軍関係者の犯罪が圧倒的に多い沖縄に向かった。

 沖縄・北谷(ちゃたん)の美浜アメリカンビレッジ。オープンカフェ風の店でビール片手に談笑していた3人組に話をきいた。

 リーダー格のマーク(24)が海兵隊に入ったのは3年前。大学の学費を払い続けることができず、2年で中退した。軍で4年間務めれば学費を払ってもらえると知って入隊。残りの1年を務めた後は大学に戻り、経営学修士(MBA)を取得して、「故郷のカリフォルニアでレストランかバーを経営したい」。

 同じくカリフォルニア出身のルーカス(21)は、高校を卒業してすぐに入隊した。「それまでは悪い友だちと付き合っていた」。このままでは道を誤ると感じたのと、世界を見てみたいと思ったことから兵役を志願した。医療保険や大学の学費支援などの軍の福利厚生も魅力だった。やはり4年で除隊し、大学で犯罪学を学んで捜査機関で働きたいと話す。

 ジョン(24)はハワイ・オアフ島の出身だ。10代で2人の息子の父親になり、自動車整備を生業にしていたが島では仕事がなく、「母親に家族全員が面倒をみてもらっている情けない状態だった」。自活を目指して就職フェアをのぞいたが、めぼしい仕事が見つからず、会場から出たところで海兵隊員に声をかけられた。家族を養うのに十分な給料が決め手だった。入隊して6年。海兵隊基地があるカリフォルニア州に家を買い、妻子はそこで暮らす。軍にずっといるつもりはない。「いつかは映画監督になりたい」

 3人に共通するのは、軍の務めを「一時的なもの」と考えている点だ。そうした人は、米軍では少なくない。

 米軍全体の現役兵士の総数は過去10年間、140万人前後で推移している。25歳以下が占める割合も、ほぼ45%が維持されている。これは、多くの若者が軍に入る一方で、若い兵士が多数除隊していることを意味する。

 軍が一過的な所属先であれば、そこでの行動を律する意志が鈍っても不思議ではない。決して先の3人がそうだというものではないが、「外国」に短期駐留する場合はさらに羽目を外しやすくなるとも考えられる。

「かつては、沖縄での任務を終えて米国に帰る前の米兵が、女性を襲うことが珍しくなかったと聞いている。『旅の恥はかき捨て』という感覚をもっている米兵が、今もいるのではないか」

 沖縄で郷土資料保存に携わる女性(50)は、そう話す。

AERA 2012年11月26日号