全国農業協同組合中央会(JA全中)が10月、3年ぶりに開いた全国大会には、野田佳彦首相や自民党の安倍晋三総裁ら党首が顔をそろえた。その大会で、JA全中が決めた方針がある。
「JAグループとして将来的な脱原発をめざす」
脱原発のために再生可能エネルギーの生産を進める。三菱商事と組んで、農場の倉庫や選果場など全国約600カ所の屋根に太陽光パネルをつける。2014年度末までに計20万キロワット分(5万8千世帯の消費電力に相当)を設置する予定だ。
JA全中が独自のエネルギー政策を打ち出すのは、初めてだ。冨士重夫専務理事は言う。
「もちろん震災がきっかけです。安心安全な農産物を供給するという我々の責任からしても、将来的な脱原発を掲げないと消費者に信頼されません」
JAグループは09年の政権交代を機に「中立」を掲げているが、それまでは自民党と一体となって農業政策を推進してきた。その自民党は長年、原発を国策として推進。安倍総裁は原発維持の立場だ。
ただ、それで自民党と決別するかといえば、そうではない。来年の参院選では、組織内候補であるJA全中・元専務理事の山田俊男氏が自民党から比例区で再選を目指す。
「電力需要をどう賄うか党内で議論がありますが、僕は将来的な脱原発はきちっとやろう、と主張します」(山田氏)
自民党は8月にまとめた次期衆院選の政権公約で、「再生可能エネルギーの導入と省エネを3年間で最大限進める」と掲げており、「議論の余地」があるとの立場だ。
やはりJAが重視するのは、環太平洋経済連携協定(TPP)だ。野田政権が進めるTPP交渉参加に反発し、最近は自民党との関係修復ぶりが目立つ。冒頭の全国大会でも、TPPを推進する野田首相がヤジを浴び、反対を主張した安倍氏は「総理!」と喝采を受けた。
JAグループの政治組織である全国農政連の山田俊臣会長は、「将来的には脱原発に向かうと考えるが、現在、全国農政連として原発問題を争点にはしていない」と話す。
※AERA 2012年11月12日号