ニュー・エラ/ティグラン・ハマシアン
この記事の写真をすべて見る

セロニアス・モンク・コンペティション優勝者の第2弾
New Era

 2007年の輸入盤ワールドを振り返ると、秀作を連発した最も印象的なレーベルに挙げられるのがフランスのNocturne(ノクチューン)だ。これはNocturneが同国および関連する独創的なジャズを映し出す象徴的な存在であることを意味している。

 ティグラン・ハマシアンは1987年アルメニア生まれ。まだ20歳の大学生ながら、2006年度セロニアス・モンク・コンペティションの優勝者という飛びぬけた才能の持ち主である。フランスのジャズ界との縁で初期キャリアを積み、同年にアルバム・デビュー。第2弾となる本作は、前作で披露した音楽性をさらに押し進めた仕上がりになっている。アルバム・コンセプトの重要点は自己のルーツを踏まえて、母国の古謡も創作のモチーフとしたこと。これがハマシアンの個性を形成する柱なのだ。2部構成の冒頭の2曲は伝統と文化の多様性の理解についてのメッセージが込められており、切れ味鋭いトリオ・サウンドは誰もが若き才人の素晴らしさに納得できるトラック。メインのピアノに対して彩り的に加える電気鍵盤の巧みな使い方も、ハマシアンの優れたセンスの表れだ。リズム・アレンジを工夫したモンク曲《ウェル・ユー・ニードント》や、アップ・テンポのタイトな演奏でムタン兄弟との結束の固さを示すマイルス曲《ソーラー》と、ジャズ・カヴァーも充実。高度なテクニックとオリジナリティが全編で躍動するこのアルバム。輸入盤ウォッチャーの独占アイテムにしておく手はない力作である。

【収録曲一覧】
1.Part 1:Homesick
2.Part 2:New Era
3.Leaving Paris
4.Aparani Par (The Dance Of Aparan)
5.Well,You Needn’t
6.Memories From Hankavan And Now
7.Gypsyology
8.Zada Es (You’re An Ill-fated Girl)
9.Solar
10.Forgotten World

ティグラン・ハマシアン:Tigran Hamasyan(p,key) (allmusic.comへリンクします)
フランソワ・ムタン:Francois Moutin(b)
ルイ・ムタン:Louis Moutin(ds)
ヴァルダン・グリゴリャン:Vardan Grigoryan(duduk,shvi,zurna)

2007年7月パリ録音

[AERA最新号はこちら]