誰が始めたのか、数年前からインターネットの掲示板で群馬県をいじる書き込みが溢れている。そこでの群馬県のポジションは、「未開の地」。
まだ測量も終わっておらず、裸に腰巻き姿の人が原始的な道具を使った生活をしていて、成人式にはバンジージャンプをする。同じく知名度の低い隣県、栃木県との県境は常に緊張状態にある。その地は「グンマー」と呼ばれ、砂漠の大きなテントのような写真には「群馬県庁」の注釈……と、ネット住民の暴走はとどまることを知らない。
9月18日に発表された地域ブランド調査2012(ブランド総合研究所調べ)の都道府県魅力度ランキングで、群馬県は47位。図らずも最下位を獲得してしまったわけだが、これは今に始まったことではない。日経リサーチの地域ブランド戦略サーベイでは、地域総合評価で08 年、10年ともに全国最下位を記録。
さらに5月にはスマホのゲーム「ぐんまのやぼう」がリリースされた。ゲームを立ち上げると群馬県のシルエットが現れ、一定の時間がたつと特産のネギやこんにゃく、キャベツが生える。収穫するとG(グンマー)ポイントがたまり、集めると他都道府県、世界や宇宙まで制圧できる。
ミニゲームも満載でかなり本格的な内容だが無料でダウンロードでき、いっさい課金はなし。10万ダウンロードで人気ゲームと言われる市場で、「ぐんまのやぼう」は80万弱のダウンロード数を記録した。
この人気を受けて、群馬県は「ぐんまのやぼう」制作者の本間和明さん(28)を観光特使に任命した。本間さんは言う。
「こんなに人気が出るなんて、正直驚いています」
先のブランド総合研究所の情報接触度ランキング(その地域の情報を見たり聞いたりした度合い)は3年前に41位、2年前は38位だったのが、昨年24位、今年25位と跳ね上がった。昨年熊本県の「くまモン」が1位を獲得したゆるキャラグランプリでも、今年ぐんまちゃんは暫定3位につけている。群馬県のぐんまイメージアップ推進室の佐藤武夫室長(51)は言う。
「どんな内容でも注目してもらえることは、忘れ去られるよりもはるかにありがたい」
※AERA 2012年11月5日号