子どもの才能を少しでも早く見つけて、その可能性を伸ばしてやりたい―――。子を持つ親の、共通の願いだろう。では、子ども時代の習い事は、将来の成功とどうつながっているのだろうか。

 大阪芸術大学を卒業して劇団「第三舞台」の看板俳優で鳴らし、現在はテレビドラマや映画でも活躍する俳優の筧利夫さん(50)は、たくさんの習い事をした経験が今に生きていると感じている一人だ。

 子ども時代の習い事を数えると片手ではとても足りない。オルガン、バイオリンは週に1回自宅に先生が来てレッスン。そろばんは週5回、絵画、書道、剣道は週に2回教室に通った。金曜日の放課後は、「そろばん」「書道」「剣道」と習い事のはしご。小学校高学年になると、サッカー少年団や学習塾へも行くようになった。

「4人きょうだいの末っ子ということもあり、大事に育てられました。オルガンとバイオリンは2年ぐらいやったのに、弾けるようにはならなかった。きょうだいの話によると、レッスン中、ずっと突っ伏して寝ていたらしいしね(笑)。それでも毎週1回、親きょうだいを前に、『利夫の家庭内コンサート』といって、小一時間、悪音を聴かせ続けていたようです(笑)。そろばん以外は長続きしなかったけど、どれも今の仕事に役立っていると思います。やっぱり、やっていないと想像がつかないからね」

 習い事の経験は、役作りにも生かされたという。

 テレビドラマや映画がヒットした「踊る大捜査線」で、警視庁のキャリア「新城賢太郎」を演じたときは、新城のプロフィルを剣道三段とし、さらに柳葉敏郎さん演じる「室井慎次」と同じ高校の剣道部の先輩後輩という「裏設定」を自ら考えるなど、役のイメージを膨らませたという。

「どんな経験も、やって損にならないし、自分の基礎になる。もう一つ言えるのは、自分に向いていないものは身につかないし、続かないということ(笑)。習い事は、自分の可能性を見つけるきっかけにもなるし、たくさんやるのも悪くないかもね」

AERA 2012年10月29日号

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