子どもの教育を目的に、マレーシアに移住する日本人家族が増えている。

 長期滞在ビザ取得のサポートを手がけるJMマイセカンドホームコンサルタンシーの澤田剛さんによると、以前は最長10年間の滞在が可能なMM2Hビザを申請する人のほとんどがシニアだったが、いま増えているのはファミリー。子どもが学生ビザを取り片親が共に暮らすという、韓国人に特徴的な移住スタイルを選ぶ家族も現れはじめた。

 戸賀崎さん一家も、妻の朗子さん(44)と長男修太くん(14)がクアラルンプールに暮らし、ファイナンシャルプランナーとして働く隆一さん(54)が日本とマレーシアを行き来する生活を選択した。

 隆一さんには「息子を安直に日本の大学に行かせてもあまり意味がないんじゃないか」という思いが強く、修太くんが高校に入るタイミングでの教育移住を考えていた。友人が住むマレーシアに興味を持ち、アメリカの著名投資家ジム・ロジャーズ氏が一家でシンガポールに移住したことにも、影響を受けたという。

 当初は、肝心の修太くんが友人と離れるのを嫌がって移住に消極的だったが、この8月に家族で英国式のインターナショナルスクールを下見したことで、事態は急展開した。

「自由な雰囲気で、心配していた英語には補習クラスもある。気候もよく、すっかり気に入ってしまったんです」(隆一さん)

 下見当日のうちに、新学年がはじまる9月からの移住を決めた。翌々日には修太くんが面接と英語、数学の編入試験を受け、翌月には引っ越した。

 修太くんが編入したクラスには中国、韓国、トルコ、インドネシアなど、さまざまな国籍を持つ子どもたちが集まる。

「先生も友達もフレンドリーで、なかには英語ができない人もいる。僕もなんとかやっていけそう」(修太くん)

 子を持つ多くの親たちがマレーシアを目指す理由の一つが「多様性」だ。

 人材紹介事業・ビジネスコンサルタント事業を営む桜リクルート社の鵜子幸久さんもこう話す。

「マレーシアは中東やアフリカ圏の学生などにも大変人気があり、中東とのハブになっている。モザイク国家で外国人を異物と見なさず、対日感情もいい」

AERA 2012年10月8日号