東京電力福島第一原発事故による放射能汚染対策に苦悩する村へ異例のご訪問を熱望された天皇、皇后両陛下。その真意とは。
「川内村へ両陛下がおいでになりたいということです」
9月半ば、福島県秘書課から役場の助役席にかかってきた電話に、遠藤雄幸村長(57)は耳を疑ったという。
今なお予断を許さない福島第一原発から20~30キロに位置する川内村は、昨年3月11日の震災後、全域が警戒区域と緊急時避難準備区域に指定され、村民約3千人ほぼ全員が避難し、役場も郡山市に移転した。今も場所によっては、空間線量は毎時2マイクロシーベルトに達し、国と村が除染作業に苦闘している真っ最中だ。
「帰村して除染作業に取り組んでいる川内村を訪ねたいというのは、少し前からの両陛下の強いご希望でした」
宮内庁関係者はこう明かす。
秋は例年、国賓の来訪や叙勲・褒章、新嘗祭など、天皇陛下のスケジュールはぎっしり詰まっている。わずかに余裕があった10月13日に、関係者の都合が一致し、ご希望が実現することになったという。
天皇陛下のご学友で皇室ジャーナリストの橋本明さんはこう話す。
「今回は特に、科学者として現場を見て納得したいとお考えなのかもしれません。陛下は学者からいろいろ聞いて勉強され、除染が進んでいないことを重く捉えていらっしゃるのでしょう。原子力がつまずいたことで国にもたらされた影響を、現場を踏んでお考えになりたいという思いの表れではないでしょうか」
※AERA 2012年10月8日号