曙光―Northern Lights/マイク・マイニエリ
曙光―Northern Lights/マイク・マイニエリ
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ジャズの伝統を現代的に再構築したサウンド
Northern Lights / Mike Mainieri

 フュージョン系ヴィブラフォンの第一人者と言えばマイク・マイニエリだ。斯界の人気ミュージシャンがそれまでのキャリアを生かして、新しいアコースティック・サウンドに挑んだグループがマイニエリ=リーダーのステップスであり、一部メンバー・チェンジを経てステップス・アヘッドに改名してから、すでに四半世紀が経ったことに時の流れを感じる。さらにマイニエリが今年で70歳を迎えることにも、驚きを禁じえない。

 本作は単身ノルウェーに渡ったマイニエリが、現在フューチャー・ジャズ・シーンで活躍する同国の面々の協力を得て完成させた久々のリーダー作。電気楽器を使用した音作りにおけるベテランが、自己の表現領域を拡大するために挑んだセッティングであることが想像できる。オープニング・ナンバーがナット・キング・コールの代表曲《ネイチャー・ボーイ》と知って、一瞬ミスマッチ感を覚えるが、モルヴェルのトランペットがクールに主旋律を奏でるサウンドを聴くと、これがジャズの伝統の現代的な再構築の好例なのだと実感。何しろフューチャー・ジャズの提唱者であるブッゲを始めとする手練ミュージシャンが参画しているのだから、これらのサウンドは本物だ。

 マイニエリと北欧人たちの自然な融合が、本作の勝因と言っていい。また見逃せないのがストリングスのアレンジを務めたゴールドスタインの存在。マイケル・ブレッカー盤等々、近年編曲家仕事で優れた実績を残すスキルが、10曲目の《バプリシティ》に色濃い。

 本作のオリジナル盤は2006年末のリリースなのだが、今回登場した国内盤にはボーナス・トラックとして同曲が追加収録されており、それゆえ本稿で取り上げた次第。原盤では9曲中、カヴァー曲はマイルス・デイヴィスの《フラメンコ・スケッチ》など4曲が占めたところ、さらにもう1曲のマイルス・ナンバーが加わることによって、アルバム全体の様相に変化をもたらした点にも留意したい。同曲が1949年の名盤『クールの誕生』からのセレクトであることを含め、興味の尽きない作品である。

【収録曲一覧】
1. Nature Boy
2. Poochie Pie
3. I’ve Seen It All
4. Vertigo
5. Flamenco Sketches
6. Naima
7. Dance Of Ran
8. Bang
9. Remembrance
10. Boplicity

マイク・マイニエリ:Mike Mainieri(vib,marimba) (allmusic.comへリンクします)
ニルス・ペッター・モルヴェル:Nils-Petter Molvaer(tp)
ベンディク:Bendik Hofseth(ts)
ブッゲ・ヴェッセルトフト:Bugge Wesseltoft(key,syn,p)
アイヴィン・オールセット:Eivind Aarset(g)
ラーシュ・ダニエルソン:Lars Danielsson(b)
アンダーシュ・エンゲン:Anders Engen(ds)
ヤン・バン:Jan Bang(sampling,prog)
DJ ストレンジフルーツ:DJ Strangefruit(turntables)
ギル・ゴールドスタイン:Gil Goldstein(arr)

2006年作品、オスロ録音

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