電卓や電子辞書、Gショック。新しい市場を次々に開拓してきたカシオ計算機は、4兄弟が創業し、発展させてきた。アイデアマンの次男・俊雄氏(故人)が新商品を開発し、機械に強い四男・幸雄氏(現副社長、81歳)が製造、それを、活発な三男・和雄氏(現社長、83歳)が売り込む。経営は、人当たりが良く、まとめ役の長男・忠雄氏(故人)が担った。和雄氏によると、両親は長男を一心に寵愛。普通ならば弟たちは嫉妬し、いがみ合うところだが、忠雄氏は親代わりになって弟たちの学費の面倒も見た。

 理想的な兄弟でも、けんかはある。中でも、開発畑の俊雄氏と営業畑の和雄氏は衝突が多かったという。

「兄貴(俊雄氏)は完璧主義者。でもこだわりすぎると値段が高くなって売れない。けんかしても、これ以上言ってはいけないというところでは我慢しました」

 ちなみに、けんかをした後は、遅くとも翌日には和雄氏から歩み寄った。

「やっぱり兄貴からは謝りにくいですから。ぶつかり合うのも売れるものをつくるという目標のため。志は一つだから、すぐに元に戻れます」

 20年前に亡くなった父親は特に財産もなく、相続でもめた記憶はないという。

AERA 2012年10月8日号