

ジャーナリストの田原総一朗氏は、政府による新型肺炎対応の打ち出し方に苦言を呈する。
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新型コロナウイルスの感染者がどんどん拡大し、東京オリンピックも開催できなくなるのではないか。日本人はもちろん、世界の多くの人々が極めて心配している。
安倍晋三首相は、2月26日に官邸で開いた対策本部会合で、今後2週間以内に開催される全国的なスポーツ、文化イベントについて、「大規模な感染リスクがあることを勘案し、中止・延期・規模縮小の対応を要請する」と、自粛を求める考えを強く打ち出した。
政府は25日に、初めて新型コロナウイルス感染症対策の基本方針を発表したのだが、率直に言って、あまり具体性がなかった。しかも、小泉進次郎環境相を始め、3人の閣僚が政治活動を理由に政府の対策本部の会合を欠席しているのである。
国会で、野党はこのことを厳しく批判していたが、国民の多くも政府がどこまで本気で安全対策に取り組んでいるのか、疑問を抱かざるを得ないだろう。
それに、新型コロナウイルスに感染しているかどうかの検査だが、韓国では検査件数が4万件以上に達しているのに対して、日本の場合は、報じているメディアによって異なるが、韓国の10分の1であることは確かだ。なぜ、これほど検査件数が少ないのか。そのうえ、検査を頼みながら断られている国民が随分多いようである。検査態勢が整っている医療機関が少ないのが理由のようだ。
こうした批判が強いので、26日に安倍首相は具体的な要請を打ち出したのだが、しかしこれも自粛の要請であり、法的な根拠はなく、判断はあくまで主催者に委ねられているのである。これは、主催者の主体性を重んじているのだともいえるが、文化的、あるいはスポーツイベントなどの中止に伴う損失について、政府は補償しない、ということである。
野党各党は、これを政府の責任回避、つまり責任を負うのがいやだから逃げているのだと批判している。