


2月23日、天皇陛下は60歳の誕生日を迎えた。ただ、新型コロナウイルスの影響で一般参賀は中止。お祝いムードとはならなかったが、この機会に改めて今後の皇位継承について考えてみたい。過去に皇室に関する有識者会議の座長代理を務めた園部逸夫氏と御厨貴氏が、語り尽くした。
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御厨貴:注目されていた皇位継承議論に動きが出たとニュースが流れましたね。
園部逸夫:ええ。
御厨:2月10日の衆院予算委員会で、菅義偉官房長官が、安定的な皇位の継承について、「今後の検討に備えて、有識者への意見聴取を行っている。そして、4月の『立皇嗣(りっこうし)の礼』のあとに具体的な論議を行う」との考えを示しました。
園部:安倍政権は、議論を再開するのですか。
御厨:いいえ。関係筋からは「国会での菅官房長官の発言は、実は『裏読み』、否定の意味なんだ」と言われました。つまり菅官房長官は、有識者会議を新たに招集する、とはひと言も言っていない。本格検討する、とのニュアンスこそ口にして、専門家の意見を聞きはしても、それだけだと。政権に近い人が言っていました。「40年はやらないよ」と。
園部:いつから安倍政権は、手をつけないと決めたのだろうか。天皇陛下が退位をにじませるビデオメッセージを公表したのが、2016年8月。そしてその年の秋に有識者会議(御厨氏が座長代理)の検討会がスタートした。
御厨:ええ。第1段階で陛下の「退位」を実現させ、明示こそしませんでしたが、次の第2段階で「皇位継承をどうするのか」という本筋の議論に門戸を開くことになろうと感じていました。17年1月に退位に関する意見をまとめた「論点整理」を安倍首相に出したあと、首相公邸でメンバーの慰労会がありました。その席上で、首相自身が「次は宮家の問題だ」と口火を切ったのです。
そうしたら、すぐに今井敬座長が「有識者会議ではそこまではやりませんが、この先、皇族が減るのは間違いありません。緊急になんとかしなくてはいけないと思う。できれば安倍政権のときに手をつけないと、これはできません」と進言し、ああ、座長も踏み込んだなと思いました。