大阪地裁に向かう籠池夫妻(撮影・今西憲之)
大阪地裁に向かう籠池夫妻(撮影・今西憲之)
書類を手に不当と訴える籠池夫妻(撮影・今西憲之)
書類を手に不当と訴える籠池夫妻(撮影・今西憲之)

 安倍晋三首相夫妻の名前が取りざたされた学校法人森友学園(大阪市)の補助金不正事件で、補助金約1億7千万円をだまし取ったとする詐欺罪などに問われた籠池泰典被告(67)と妻諄子(じゅんこ)被告(63)の判決公判が19日午前、大阪地裁であった。

【写真】書類を手に不当と訴える籠池夫妻

 泰典被告に懲役5年の実刑、諄子被告に懲役3年執行猶予5年が言い渡された。

 諄子被告は大阪府と同市の補助金約1億2千万円を詐取したとされる起訴は無罪となった。法廷終了後、実刑となった泰典被告は検察によって収監された。

 この日の法廷もまさに「籠池劇場」だった。朝9時半過ぎ、大阪地裁前で待ち構えるマスコミの前に姿を見せた泰典被告と諄子被告。

 いきなり検察側が出した捜査報告書を手にし、こう演説をぶった。

「重大なことです。昨日、検事が弁護士事務所のポストに書類を入れて帰った。補助金の1000万円の金額が間違っていると」

「これあんまりや、人の命がかかっている」

 こう言って号泣する諄子被告に報道陣が殺到した。

 午前10時に法廷が始まったが、諄子被告の怒りは収まらず、弁護士の手を掴んで、涙ながらに「お願いします」と訴えた。

 あまりの取り乱しのように裁判長が「休廷」を宣言。20分後、再び法廷に姿を見せた泰典被告は最終陳述でこう訴えた。

「検事の論告求刑はあまりに無慈悲な恣意的、重罰を与えようとするものだ」

「家内(諄子被告)は冤罪だ。この人に7年の求刑、日本は民主主義国家なのか」

「(取り調べた)堀木検事は『大阪地検特捜部は襟を正して、丁寧に積み重ねて信頼を獲得せないかんのんだ』とおっしゃてたが、国策捜査の中で罪人に私たちを陥れ、詐欺師として立件、葬るつもりだ」

「(安倍首相は)テレビで『籠池は詐欺を働く人間、妻の昭恵も騙されたんだといった。首相の言葉に利用される大阪地検特捜部だ」

 最終陳述としては異例の7分にもわたる大演説だった。だが、判決は泰典被告は実刑、諄子被告は有罪判決だった。2017年2月に疑惑が発覚してから3年が経過していた。

著者プロフィールを見る
今西憲之

今西憲之

大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

今西憲之の記事一覧はこちら
次のページ
安倍首相に触れぬまま、裁判は終了