請求できる権利があることを知らないまま10年経った場合にも、時効は成立する。
時効はリセットされることもある。法律の手続きによって催促したり、借りている人が債務を承認したりすれば、請求できる権利は改めて5年延びる。借金を少しでも返すのは債務の承認に当たるため、ちょっとだけ返済して残りは時効を理由に踏み倒すことは難しい。
時効は私たちの給料を取り戻せる期間にも関わってくる。未払い残業代などをさかのぼって会社に請求できる期間はいまは過去2年分。これが4月からは5年分に延びると期待されたが、国が企業側に配慮し当面3年分になりそうだ。
取り戻せる未払い残業代は増えるが、本来はほかの時効と同じ5年分になるべきだった。国は将来見直しを検討するが、そもそもサービス残業は違法行為。きちんと残業代を支払わない悪質な企業も目立つ。被害に遭えば最寄りの労働基準監督署に通報しよう。
消費者保護の観点からは、認知症などで判断能力がないときに結んだ契約は無効になることが明記された。これまでも判例などで無効だとされていたが、条文ではっきりと示した。高齢化で認知症になる人が増えていることにも備えたものだ。
ネット取引への対応では、細かい契約項目をまとめた「定型約款」が有効だと明記された。ホームページで定型約款に同意したというボタンをクリックすれば、記載内容のすべてを理解していなかったとしても、契約が成立したことになる。急増するネット取引を円滑にするための改正だ。内容を十分確認しないまま「同意ボタン」をクリックする人は多いが、より注意が必要となる。
もちろん消費者に一方的に不利な契約は無効になることがある。
例えば、「いかなる場合も契約解除は認めない」「損害賠償には一切応じない」といったものだ。最近はネット通販などで高齢者のトラブルが増えている。悪質業者が定型約款への同意をもとに、不利な契約の解除に応じないことも考えられる。トラブルがあれば、消費生活センターなどに早めに相談する。
部屋を借りるときに払った敷金は、契約終了時に原則として戻ってくる。借りた人は原状回復の義務があるが、通常の使い方によって生じた傷や経年変化については、その義務を負わない。ちょっとした壁の傷や汚れなどだ。これまでは敷金が返還されなかったり、壁紙の貼り替え費用などが一方的に差し引かれたりするケースが相次いでいた。